歯車は簡単に・・・

なんだかバイエルンがおかしい。1年おきにリーグ優勝するバイエルンにとって今季は優勝が至上命題とされている。 確かにシーズン前半戦はよかった。

クロースが覚醒し、シュヴァインシュタイガーとのコンビから生み出されるハーモニーはバルセロナのそれと近いものさえあった。そこにリベリという味付けの天才がいて、ゴメスというフィニッシャーがいる。それに加えて今季からボアテング、ノイアーなどが加わり、守備の安定度も格段に増し一時はリーグで8試合連続無失点という記録も作った。当時負けなしで後にユナイテッドをも粉砕したシティ相手に完勝したシーンはバイエルン、シティファンでなくとも記憶に焼き付いているのではないだろうか?

しかし、ナポリ戦でシュヴァインシュタイガーが怪我で離脱してから失点が急激に増加し、勝ったり負けたりな不安定な戦いをするようになった。

なぜか?

「理由はシュヴァインシュタイガー」の一言で済ましてもいいのだが、そこから生まれた弊害をおって説明したい。

シーズン前半戦、最も強った時のバイエルンは、シュヴァインシュタイガー が守備的なグスタヴォ、もしくはティモシュクとダブルボランチを組み、その上にクロースをトップ下に置いたシステムで見事なサッカーを展開していた。

しかし、シュヴァインシュタイガーの故障離脱で歯車が狂い始めた。監督のハインケスはその代役としてクロースをボランチに配置し、トップ下にはミュラーを起用。そして、ミュラーのところにちょうど復帰したロッベンを入れたのだが、この結果が招いたものはチーム力の低下であった。最初は私もこのフォーメーションで乗り切れると信じていた一人だったのが、それは大きな間違いであった。

元々シュヴァインシュタイガーとクロースの縦の関係は、守備と攻撃の橋渡しであり、このユニットの働きによりバイエルン攻撃はスムーズ回っていた。だが、シュヴァインシュタイガーの離脱後にクロースのポジションを下げてしまったことで、クロースからの決定的なパスは格段に減少し、それが神出鬼没な動きが特徴的な世界屈指の受け手、ミュラーの不振にも繋がってしまったのである。

さすがにハインケスも「これはまずい」と思ったのか、クロースを本来のトップ下へ移動させる。この再コンバートにより、事態は解決するかに見えた。しかし、何を思ったのかグスタヴォやティモシュクの相棒に若いアラバを選択したことで、今度は新たな問題が生じた。それは、彼の出来不出来が試合結果に直結してしまうという点だ。たしかにアラバの才能は豊かであるが、スタメンで起用するにはまだまだ実力不足であり、安定感が欠如した若手にチームのかじ取り役を担わせるにはリスクが大き過ぎると言わざる得ない。つまり、不安定なプレーヤーに重責を与えたことで、チーム全体が不安定な状況に陥ってしまったのである。

そして、迷走するハインケスの采配でふらふらと飛んでいるチームは、ある1人の選手によって墜落寸前まで追い込まれる。

そう、今巷を騒がしているロッベンである。

シュヴァインシュタイガーが一時復帰(直後に再び怪我)をしているときにロッベンもスタメンで固定され始め、そしてハインケスは前半戦の形にロッベンという+αを加えようと試みたが、これが大失敗に終わったのだ。

それはロッベンによってはじき出されたグスタヴォ、ティモシュクら汗かき役の不在が理由ではないかと考える。ロッベンは周知の通りドリブルが最大の持ち味であり、彼を起用することは、ボールを持つ時間が長くなることに加え、守備の貢献度もあまり期待できない。すると、前半戦に見られたパスワークは当然跡形もなく消える。言い替えるならば、ロッベン自身が攻撃のブレーキとなってしまっていたのだ。

もっともロッベンはそのプレーを改善し、チームの方針に歩み寄っている。

私はこれでいいと思う。直近のシャルケ戦でも若干ではあるが良かった時のチームの面影が垣間見えた。

しかしそんなロッベンであるが、シュヴァインシュタイガーが復帰した際にはスタメンからは外すべきだと思う。ロッベンがチームを尊重しているとはいえ、シュヴァインシュタイガーがスタメンに戻ってくることは、つまり、グスタヴォorティモシュクが必要であり、バイエルンにはロッベンというアイデンティティではなくパスワークというアイデンティティを持っていて欲しいと思うからだ。

※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。


筆者名 平松 凌
プロフィール トッテナム、アーセナル、ユヴェントス、バレンシア、名古屋グランパスなど、好みのチームは数あるが、愛するチームはバイエルン。
ツイッター @bayernista25
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