【まさかのタイミング】

不意を突かれた。メディアも、サポーターも、そして香川本人までもが、不意を突かれた。 本人サイドとはほぼ合意していたとみられ、報道にあったように、移籍金を巡るクラブ間合意がまとまればあとはメディカルチェックのみだから、さっさと発表するかもしれない、とは思っていたがまさかこのタイミングでとは。アジア最終予選という大事な日本代表での試合もあり、代表戦後に渡英して決めるとみられていたが、不意打ちだ。一応、ユナイテッド側の一方的な発表ではなく、ドルトムントからの発表も公式HPで行われている。

こうして後はメディカルチェックとワークパーミット(労働許可証)の認可を待つだけとなった。 メディカルチェックはW杯予選の残り2試合で余程のことがなければ問題ないし、英国の厳しい基準のワークパーミットも問題なく降りるだろう。宮市亮に降りて香川真司に降りなければ、これは、デーブ・スペクターのジョークよりも笑えない。

【移籍発表のタイミングの謎】

なぜこのタイミングでの発表となったのか。本人も戸惑うぐらいなので、余程のことがあったのかと考えるが、あくまで個人的な推測を幾つか上げてみたいと思う。

1.他のクラブの横槍を嫌った
表に出ている具体的な正式オファーは、ユナイテッドしかしていなかったはずである。もちろん水面下ではいろいろなクラブが行なっていたと思われるが、ユナイテッドは獲得の意思を第一に示してきた。先日のオマーン戦にて、大活躍とはいかなかったが、自身のポテンシャルはしっかりと発揮し、勝利に貢献した。2試合の代表戦を残して、そこで活躍すれば、市場価値が高まり、他のクラブが横槍を入れてくる可能性も否定はできない。よって、十分な移籍金でドルトムントが納得したところで、早めに決めてしまおう、という説。

2.ワークパーミットの発給
発行基準がそうとう厳しい英国のワークパーミット。過去2年間での代表戦での出場歴が75%だとか、いろいろあるが、まあとにかく厳しい。香川は怪我の影響もあり、これを満たしてはいないが、ブンデスリーガでの活躍は言うまでもないので、これも問題なく降りるはずだ。ただ、時間がかかる場合を想定して、早めに発表することで、許可をより得やすくするものと見られる。前述したが、宮市亮はヴェンゲルが熱心に活動した結果、フェイエノールトでの活躍もあり、審査会を経て特例で得ることが出来た。と、普通に考えれば宮市がこれで問題ないのに、香川は引っかかる要素がないと言えるのである。

時間がかかると不都合なのか、と突っ込まれるとよくわからない。ただし、クラブは7月下旬に中国へのツアーを予定しており、そこに確実に間に合わせたい気持ちもあるのだろうか、と推測した。

3.商業的な理由
これは先に推測できたのではないかと考えられるのだが、商業的な理由だ。英国において2012-13シーズンのホームのユニフォームは5/31発売になっているが、日本に置いては7/5発売開始である。メディカルチェックを経て、全ての移籍手続きが完了するのが6月下旬になりそうだ、と公式HPでも述べられている。それに合わせて、というのは考え過ぎか。

と、それっぽい理由を上げてみたが、真相はわからない。とにかく香川本人が戸惑っているのだ。ほぼ合意していたとみられ、あとはクラブ間の移籍金の調整と、代表戦に集中したいこともあって、それに配慮してその後、ということを前提に話していたのかも知れない。しかし大人の事情と言うものは厄介である。

ここで、筆者は勝手ながら、代表での生活で槙野智章と吉田麻也にいじられることを嫌って、という安易な推測をしまったことをここでお詫びしておこう。

【マンチェスター・ユナイテッド初の日本人選手】

稲本潤一もアーセナルに在籍した、宇佐美貴史もバイエルンにいてチャンピオンズリーグの決勝にベンチ入りした。内田篤人はチャンピオンズリーグでベスト4に進出した。中田英寿はローマでスクデットを獲得した。中村俊輔はスコットランドで大活躍し、クラブの歴史にその名を刻んだ。小野伸二もUEFAカップを獲得した。長友佑都はインテルで愛されている。過去も今も、日本人として活躍してきた選手はこのように多くいるし、これからも増えていくだろう。しかし、今回はマンチェスター・ユナイテッドだ。

シーズンが終われば、様々な数字が発表される。資産価値や、クラブランキング、ファンの数etc…。全てとは言わないが、大抵のこういったランク付けにて、トップ3を占めるのは、マンチェスター・ユナイテッド、バルセロナ、レアル・マドリーの3クラブである。

まだ正式契約には至っていないし、1分たりともあの赤いユニフォームを着てプレーはしていない。しかし、純粋に戦力としてマンチェスター・ユナイテッドに獲得されたということは、歴史的な出来事である。私がマンチェスター・ユナイテッドを愛しているから言うのではなく、客観的に見ても、これは既に偉業だ。もちろんこのテーマはパク・チソンがいかに凄いか、ということを再度確認することにもなる。バルセロナには下部組織に久保建英 「選手」も在籍しており、彼に明るい未来が訪れそうなのは、日本人ならずともご存知だろうが、彼がバルセロナのトップチームに上がってくるのは、もうしばらく時間が必要だ。レアル・マドリーにいたっては現在では日本人選手が所属する可能性はないように思える。その中での香川真司である。サッカーファンのみならずとも、この凄さはTwitterやFacebook、メディアを通して、十分に感じていると思う。私のタイムラインは香川祭りと化していた。

【起用法を考えてみる】

もう決まったと仮定して、実際ピッチの上で、どこでどのように起用されるのか。という内容のツイートが飛び交っている。代表戦を見ていても思うのだが、やはり彼が活きるのはバイタルエリアである。よってトップ下がやはり適任だと思われるが、ユナイテットは基本的にサイドアタック中心のチームである。それはファギー・ベイブスの歴史でもあり、未だに現役のスコールズとギグスの歴史でもある。バイタルエリアを上手く使うチームではない。4-4-2のフラットがベースだが、1トップもしばしば用いることもある。特に2010-11シーズンは、ルーニーを少し下げ、チチャリートを最前線に置いた形でシーズン後半戦を乗り切った。

1.サイドで起用するなら
香川をサイドで起用するのならば、左サイドだろうが、自力のドリブルで活きるタイプではない。ウィングではないのは明らかだ。とはいえ、先に指摘したように、基本的にバイタルエリアを上手く使うよりはサイドアタックのチームなので、サイドにいても、するすると中に入ってきて空いたバイタルエリアにて楔で受けることに問題無いだろう。 問題はヤング、ナニ、バレンシア、といった、面々との競争が待ってることだ。

2.トップ下、及びFW的に起用するなら
香川の良さの一つに、ターンの速さがあげられる。後ろから来るボール(パス)を受けて、入れ替わるような形で前を向く速さは、世界的に見てもかなり速い。これを活かすためにはやはりこの位置だろう。ドルトムント的とも言うべきか、ドルトムントは香川にとって夢の様な環境であった。それに近い形を導入すれば、おそらく上手くやれるものと、安易ではあるが私は考える。ルーニーを不動として、その相手を巡って、ウェルベックやチチャリートなどとの競争になる。 個人的にはこれがもっとも見たい形ではあるが、香川システムとも呼べそうなこの形が実際見られるかどうかは未知数である。

ウィングの人材を見ればクリスマスツリー型の2シャドーは誰も活きる形ではないので、これは考えにくい。無論怪我人の状況によっては観ることが出来るかもしれないが、ファーストオプションにくる気配はない。 と、起用法に関してはいくらでも考えられそうだが、不安が全くない訳ではない。ただ今はそれらを気にせずに、以前にこれらを理由に、香川加入を疑ったこともある私は、現在、遠いところにいることにしておく。

【香川加入の影響】

既にルーニーとのコンビネーションや、スコールズからの楔のパスを受けて、バイタルエリアで大暴れする香川を妄想してお腹いっぱいになりそうなのだが、無事香川がフィットすれば、煽りを食らう選手が必ず出てくる。そう、今期のベルバトフのような立場の選手だ。主力では前述の5人(ヤング、ナニ、バレンシア、ウェルベック、チチャリート)はその候補であるが、契約交渉などの状況から、ナニが市場に出される可能性を否定出来ない。他に噂される選手の獲得に移籍金がかさめば、可能性は低くないと思われる。

【背番号はいかに】

さて、日本人として、まずはW杯予選をきっちり戦ってもらうことが一番なのだが、その後に待ち受ける正式契約の場を想像しただけでも、既に鳥肌ものだ。ここでも様々な憶測や願いがあちこちで見られるが。香川がいったい何番を背負うのか、という話題は尽きない。オーウェンが退団したことで、かの有名なユナイテッドの「7」は現在空いている。ベルバトフがつけていた「9」に関してはおそらくウェルベックがつけることになるだろう。ドルトムント時代に付けていた「23」は既にクレヴァリーがつけているが、ファビオがレンタル移籍ことを踏まえて「20」が空く。もっと大きい数字でも全く驚かないが。これに関しては、みなさま、妄想に妄想を重ねて、正式契約の場を待っていただきたい。

この発表を受けてこれだけ盛り上がるのだから、無事にフィットして活躍し始めた日には、とんでもないことになるのだろうな、と安易に想像できる。日本でもあのギンガムチェックの赤いユニフォームが売れるのだろう。 体型的に、ルーニーにギンガムチェックは似合わない気がするが、香川は多分似合うんじゃないかと思っている。がっちりとした体型には合いそうにないし、リオ・ファーディナンドのように適度に締まった身体には似合うだろう。


既に関係各所にいろいろなものをもたらしている感じがするが、このコラムの更新頻度が秋以降に上がることは避けて通れないだろう。ニヤケながらパソコンに向かって何やら作業しているのだ。傍から見たら気持ち悪いだろうな、と時折思う。しかしこれほど楽しいことはない。無論香川の活躍と、ユナイテッドの勝利を前提が前提だ。

早くも新シーズンが待ち遠しい。

※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。


筆者名 db7
プロフィール 親をも唖然とさせるManchester United狂いで川崎フロンターレも応援中。
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