終盤戦を迎え、いよいよ佳境に入ってきた今シーズンのセリエA。王者ユヴェントスを軸に展開される優勝争い、ジェノア、パレルモといった豊富な戦力を抱えるクラブが巻き込まれている残留争いの行方には、多くのティフォージが注目していることだろう。

この2つの争いと同じく耳目を集めるのが、CLとELの出場枠を巡る熾烈な争いだ。該当する各クラブにとっては予断を許さない戦いが最後まで続きそうだが、カルチョでは異端のパスサッカーで4位(第30節終了時)につけるフィオレンティーナもCL行きをかけ、ラストスパートを仕掛けるはずだ。

今回の当コラムでは、躍進するフィオレンティーナで一際輝くモンテネグロ代表の超逸材を紹介したい。

・オフェンス全般の能力に優れる

前述したように、今シーズンのフィオレンティーナはヴィンチェンツォ・モンテッラ新監督の下、魅力的なパスサッカーを展開している。そして、ダビド・ピサーロ、ボルハ・バレーロ、アルベルト・アクイラーニら技巧派たちがつないだボールをフィニッシュに結びつけるのがステヴァン・ヨヴェティッチの仕事だ。

ヨヴェティッチの最大の魅力は、オフェンス全般の能力に優れている点だ。相手DFを嘲笑うかのようなスルーパスや緩急をつけたドリブルで決定機を演出し、ゴール前では落ち着きを決して失わず、ゴールマウスにボールを流し込む。これといった穴がない万能型のアタッカーで(タイプ的にはウェイン・ルーニーに近い)、トリッキーなプレーだけでなく、周りを活かす術も身に付けている。更に、こうしたテクニックだけでなくフィジカルにも優れており、対峙するDFにとっては厄介極まりない選手だろう。

得意とするポジションはセカンドトップあるいはトップ下で、以前からロベルト・バッジョ、フランチェスコ・トッティといったカンピオーネと比較されてきた。だが、トップ下を置かない「3-5-2」と「4-3-3」を併用する今シーズンのフィオレンティーナでは、純粋なFWとして起用されており、「4-3-3」の際にはCFの位置でプレーしている。その結果、フィニッシュの全局面で絡む本格派のストライカー(ズラタン・イブラヒモヴィッチやカリム・ベンゼマに近いだろうか)としてその才能を全面開花させようとしており、そのプレーには貫録が出てきたと言って良いだろう。

・獲得を狙うクラブとの相性は?

当然ながら、才能豊かなヨヴェティッチの動向は多くのビッグクラブが注視しており、中でもユヴェントス、マンチェスター・シティ、アーセナルが獲得に熱心であることが度々報じられている。ヨヴェティッチ本人は「フィオレンティーナ愛」を再三に渡って公言しており、移籍の可能性はそこまで高くないかもしれない。だが、フィオレンティーナは今冬の移籍市場でイタリア代表に名を連ねるFWジュゼッペ・ロッシをビジャレアルから獲得しており、ヨヴェティッチの移籍に備えたという見方もある。そこで、フィオレンティーナのサポーターの方々には大変申し訳ないのだが、噂される移籍先との相性診断を行いたい。

Jovetic in Juventus

まずは、かねてから軸となるFWの補強が噂されてきたユヴェントスのケースから。すでにスペイン代表の大型FWフェルナンド・ジョレンテの獲得が決定しているが、クラブ首脳陣はそのジョレンテとヨヴェティッチの2トップを目論んでいると言われている。

気になるユヴェントスとの相性だが、「相性はかなり良い」と言って良いだろう。ユヴェントスもフィオレンティーナと同様にポゼッションを重視するスタイルであり、フォーメーションも同じ「3-5-2」が採用されている。国内の移籍ということで環境の変化がさしてない点もメリットで、移籍早々にフィットするのではないだろうか。

「フィオレンティーナからユヴェントスへの移籍劇」と言えば、バッジョの一件が有名であるが、偉大なファンタジスタと同様の道をヨヴェティッチが進むのか注目だ。

Jovetic in City

マリオ・バロテッリをミランに放出し、前線の手駒が物足りないマンチェスター・シティも噂される新天地候補のひとつだ。今シーズンのシティはメインの「4-2-3-1」の他に3バックも試行しているが、上図では基本形の「4-2-3-1」にヨヴェティッチを当てはめた。

さて、相性診断を行いたいところだが、最終ラインのビルドアップから、2列目のコンビネーションを軸に相手を崩すスタイルを標榜するシティとの相性は良いと言える。しかし、指揮官ロベルト・マンチーニの去就が現時点では不透明で、政権交代によっては目指すスタイルが変化する恐れがあるだけに、シティへの移籍は慎重にならざるを得ないのではないだろうか。

Jovetic in Arsenal

最後は、約27億円の移籍金を用意したと伝えられるアーセナルだ。ロビン・ファン・ペルシーをマンチェスター・ユナイテッドに放出して以降、核となるCFの不在に悩まされてきたアーセナルにとって、ヨヴェティッチは喉から手が出るほど欲しい人材だろう。

伝統的にポゼッションからの多彩な崩しを重要視するアーセナルとヨヴェティッチの相性は抜群で、イングランドの水に慣れれば、間違いなくゴールを量産できるだろう。しかし、オリビエ・ジルーが徐々に本領を発揮し始め、セオ・ウォルコットがゴールゲッターとして覚醒しだしたことを考えると、他のポジション(守備的MFなど)に資金を回すシナリオは十分考えられる。だが、ヨヴェティッチの他にダビド・ビジャ(バルセロナ)、ロイク・レミ(QPR)といったFWをターゲットにしているという情報からも、核となるCFの獲得は現実的だ。アーセナルがCLの出場権を獲得できるかどうかという点もこの縁談の行方を大きく左右するだろう。

ここまで、ヨヴェティッチと噂される移籍先の相性診断を行ってきたが、いかがだっただろうか。今夏の移籍市場では例年以上にFWの移籍が話題を呼びそうで、ラダメル・ファルカオ(アトレティコ・マドリー)、エディンソン・カバーニ(ナポリ)といった当代きってのストライカーの移籍がほぼ確定的だと言われているが、着実に成長を続けるヨヴェティッチの動向に注目するのも一興だ。

2013/4/4 ロッシ


筆者名:ロッシ
プロフィール:エル・シャーラウィ、ネイマール、柴崎岳と同世代の大学生。鹿島アントラーズ、水戸ホーリーホック、ビジャレアルを応援しています。野球は大のG党。
ツイッター:@antelerossi21

【厳選Qoly】ヨーロッパでは驚き?「まだJリーグで現役を続ける信じられない5名」

日本人がケチャドバ!海外日本人選手の最新ゴールはこちら