チームの性格と選手達
シンガポール代表の前線にはアラム・シャーやインドラ・サフダン・ダウードなど名選手がいたが、その中でひと味違う存在がアレクサンドル・ジュリッチであった。
ユーゴスラヴィア出身の長身ストライカーで、42歳まで代表チームの一員であり、そして44歳まで現役を続けた。圧倒的な空中戦の強さとテクニックを兼ね備えた特別な選手だった。
彼がチームを去ったことは大きな影響を与えた。東南アジア諸国の例に漏れず、シンガポールも決して体格に優れる選手は多くない。軽やかなドリブルを持つアタッカーは多いものの、空中戦や競り合いに強いと言える存在が乏しい。
以前はオプションとして大きな選択肢の一つとなっていたハイボールからの展開は使えなくなり、良くも悪くも典型的な東南アジアのチームという形になっている。
スズキカップ時には4-4-2を使っていたものの、先日のカンボジア戦では4-3-3を使用するなどシフトチェンジは行っているが、やはり前線のスピードを生かすプレーが特徴である。
その中心的な存在と言えるのが最前線を務めることが多いFWハイルル・アムリ。そして主に右サイドで起用される10番のファズルル・ナワズであろう。また、2トップや4-1-4-1の場合は共にシャリル・イシャクが起用されることも多い。
彼ら3名はスピードとドリブルを得意としている選手であり、現在のシンガポールの攻撃では生命線とも言える存在だ。
中盤で注目されているのはボランチのハリス・ハルンであるが、さらにこのところは本来センターバックのサフワン・バハルディンが一列上がって起用されている。オーストラリアでも活躍を見せた万能DFは、現在攻撃面での評価を高めている最中だ。
最終ラインの中心はダニエル・ベネット(同国代表128試合出場の最多記録を保持するイングランド生まれの選手)で、その後を継いだのがバイハッキ・ハイザンであった。190cmの長身でスピードもあり、非常に気性が荒い選手であった。
ただ先日のカンボジア戦では彼が起用されず、若きマドゥ・モハナが使われており、もしかしたら守備陣の高さという点でも減少傾向にあると言えるかもしれない。