レスターの強みを封じる2トップ。

3トップという選択も、今季は取り入れて来たユルゲン・クロップ。スターリッジやイングスといったFW陣の負傷もあり、彼らは前線をどのように構築していくかという面で苦しんでいる。フィルミーノやオリギを中央に据え、サイド2枚のウイングにサポートさせる選択もあったはずだが、今回は2トップに近い形を選択。時にトップ下の様にも振る舞えるフィルミーノとCFのオリギ、2人が攻撃時はある程度近い距離でプレーをこなした。

「相手が強ければ、弱体化させてから叩くという手もある」リヴァプール就任直後にコメントしたように、炎の様なドイツ人指揮官は冷静さも併せ持つ。ハードロックの様なフットボールを、時に理知的に組み替えること。それこそが、若き指揮官の持つもう1つの顔だ。ペップ・グアルディオラとの邂逅、最終年のドルトムントで味わった苦しみ…様々な経験を経て、彼も1つ先へと進んでいる。

レスター・シティの強みの1つ。それは、破壊力のある前からのプレッシングだ。容赦なく繰り出される波状攻撃の様な守備は、相手の組み立てを阻害するだけでなく、比較的脆弱な守備ラインを支える上でも役立っている。単純に前からの守備を嵌める回数が増えれば、相手の攻撃回数を制限出来るからだ。前線にヴァーディー、岡崎といった献身的な選手を置き、状況において前からのプレッシング。間に合わなければリトリートへの移行を行う。それこそが、レスター・シティを支えてきた守備のメソッドだった。

クロップが狙いを定めたのは、レスター・シティを支えてきた2つの翼のうち1つ。前からのプレッシング、を制限することだった。ゲーゲン・プレッシングの使い手は、プレッシング封じを熟知していた。

前線に2人のストライカーを配置すること、そして両翼のコウチーニョとララーナが何度となく仕掛けを見せることによって、レスター・シティは4人を4バックで見なければならない状態が増えてしまった。

画像でも解ると思うが、前からのプレッシングを外されてしまうと、この様に守備陣が数的同数を作られやすい。

このようなリスクがあると、なかなか前から中盤が仕掛けていく形も作りにくくなる。実際、レスターは体力的な問題もあったのかもしれないが、プレスを仕掛けられずに引く場面が多かった。これはある意味で、クロップの術中に嵌っていたとも言えるのではないだろうか。

1トップや3トップでは、守備がある程度余って守ることも出来る。しかし、2トップに加えて「中央に何度となく入り込むアタッカー」がいると難しい。特にララーナは機を見て中央に受け手として走り込み、レスターのCB陣を混乱させた。

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