◎「ドラゴンボート」ではサッカー界のあのレジェンドが!

最後に紹介するのは「ドラゴンボート」です。

これは競技以外で見た方もいるでしょう。古代の中国で生まれた「龍舟」は2000年以上も中国文化圏で祭礼として続きました。日本でも長崎でペーロン、沖縄でハーリーと呼ばれ親しまれましたが、1976年の香港での国際レースをきっかけに近代スポーツへと変化しました。2010年の中国・広州に続き、2018年にインドネシアのジャカルタで行われる夏季アジア大会での正式採用が決まっています。

五輪のボート競技はこぎ手8人と舵取り1人が乗る「エイト」が最多人数ですが、ドラゴンボートにはこぎ手が20人、舵取りに加えてドラを叩く太鼓手も1人、全部で22人乗りのレースもあります。600年ぶりに復活した沖縄の「豊見城ハーリー」もこの競技用ルールをもとに行われるようになりました(16人制)。

1992年に「日本龍舟協会」として発足した一般社団法人ドラゴンボート協会は財務を全面公開しています。2015年度にはドーピング対策として88万7千円のtoto助成、それを行った日本選手権自体にもJSCからのスポーツ振興基金が充てられ、合計で340万7千円になりました。協会自体の年間収益が1734万9千円で、toto助成だけで5.1%、基金と合わせると19.6%になり、toto抜きでは協会の運営が非常に厳しくなる事が分かります。

そしてこの協会は大阪のサンケイスポーツにあります。谷達也事務局長によると、日本初のドラゴンボート競技だった1988年の国際大会はサンケイスポーツ主催の大阪開催だった縁で今でも同社内に本部を置いているそうですが、編集局長として大会スポンサー確保などに貢献したのが、あの賀川浩。もちろん、W杯取材10回、91歳の現在でも現場取材を続ける「大先生」です。

賀川さんの前職は知っていましたが、「世界で一番人気のあるスポーツ」とともに「伝統から生まれたニュースポーツ」も日本に根付かせ、それが今につながるという話には驚きました。

「2014年度バロンドールはC・ロナウドに決定、賀川浩氏がFIFA会長賞に」
https://qoly.jp/2015/01/13/2014-fifa-ballon-dor

「90歳の現役ライター、賀川浩氏が記念講演で日本サッカーを語る」
https://qoly.jp/2015/09/09/sports-gakkai-memorial-l...


2016年7月17日開催の日本選手権より。「天神祭奉納」として行われ(上)、ボートには「サンスポ」のロゴ入り(下)。出典:日本ドラゴンボート協会Facebookページ(こちら

こんな感じで、toto助成という視点だけでも興味深い話が山のようにありました。

2020年の東京五輪に向けて、「日本のメダルはいくつか」「新しい競技はどんなか」「今まで知らないスポーツを楽しめるか」などなど、いろいろな視点を持って、これからも注目していこうと思います。

筆者名:駒場野/中西正紀

サッカーデータベースサイト「RSSSF」の日本人メンバー。Jリーグ発足時・パソコン通信時代からのサッカーファン。FIFA.comでは日本国内開催のW杯予選で試合速報を担当中。他に歴史・鉄道・政治などで執筆を続け、「ピッチの外側」にも視野を広げる。思う事は「資料室でもサッカーは楽しめる」。

サイト: http://www.rsssf.com/
Twitter: @Komabano
Facebook: masanori.nakanishi

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