Qolyアンバサダーのコラムニスト、中坊コラムの中坊氏によるコラムをお届けします。

ヴィッセル神戸 0-2 サンフレッチェ広島

2月8日(土)、富士フイルムスーパーカップは「神戸 0-2 広島」というスコアで決着。

この結果は

・ACLE等もあり過密日程を踏まえキッチリ主力温存する神戸

・過密日程だろうがどんな大会でもいかなる時も主力を投入する広島

という対照的な布陣によるもので、スタメンの時点で試合前から広島の勝利がほぼ確定であったし、極めて妥当なスコアといえる。

ターンオーバーの対照的な使い方

神戸はこの試合に負けたとはいえACLEに向けて少しでも負担軽減できたうえ、控え組をテストできたので特段大きな問題はない。この徹底したターンオーバーは昨季の神戸でもよく見られた形であり、このやり方だからこそ終盤の疲弊をできる限り回避させ、リーグ連覇に至ったともいえる。

昨季は天皇杯だとベスト8の鹿島アントラーズ戦は完全ターンオーバー(3-0で勝利)、ベスト4の京都サンガF.C.戦ですら大迫勇也・武藤嘉紀ら主力複数名温存するターンオーバーを行った(2-1で勝利)。

ACLEにおいてはリーグ優勝争い真っ只中であることを踏まえ、リーグフェーズ6試合目の浦項スティーラース戦で完全ターンオーバー、主力はベンチ入りすらさせずに韓国遠征を回避(1-3で敗戦もその5日後のJ1最終節で3-0勝利)するなど、吉田孝行監督の徹底したターンオーバー采配はリアリストの権化ともいえるし、その采配は2024年シーズン、リーグ・天皇杯優勝の2冠という堂々たる結果に表れた。

スーパーカップは国内タイトルとはいえ、リーグ戦、ACLE、ルヴァンカップ、天皇杯に比べると重要度は落ちるうえ、優勝と準優勝で賞金は1,000万円しか差がない。

この後の過密日程対策ならびにサブメンバーへの出場機会のチャンスを与えたと割り切って完全ターンオーバーを行った吉田監督の采配は、昨季から全くブレていないと改めて感じたし、今季の過密日程に対してもこのやり方で乗り切っていくのだろうと思わされた。

「全ての試合に勝ちに行くべきだ、主力を投入するべきだ」という意見は正論。ただし、その正論を貫いて耐えられる日程ではない。ACLE・ACL2に参戦するビッグクラブの過密日程は戦略的にローテーションをしながら戦わないと崩壊する。

一方、広島はミヒャエル・スキッベ監督が基本的にターンオーバーをあまり行わず、主力投入を第一とする指揮官であるためスーパーカップでもこの完全主力スタメンなのはまさに当然。2月からACL2の海外遠征含め、いきなり月に6試合ある過密日程だがおかまいなし。

サッカーファンにとって広島が強いのは去年から当然周知の事実だが、今季タイトルを掴むためには「ターンオーバーしないで終盤疲弊してしまい、優勝争いから脱落する」というルートをいかにして回避するかが全てだといえる。

広島は疲労対策さえできれば今季も相当に強い

広島は新戦力組のジャーメイン良、田中聡、菅大輝がどれも当たりの予感しかしない動きとフィット具合で補強は完璧。補強した時点で「この選手を獲ることができるのか」と唸らせる良い補強だったが、実際のプレーを見ても確実にチームのレベルアップに貢献している。他のクラブと比して、既にチームとして完成度が相当高いレベルにある。

広島における最大の課題、「終盤の疲弊による優勝争い脱落をいかに防ぐか」は「いかにして加藤陸次樹の負担を減らせるか」と同義であるが、その負担を減らすミッションに最も期待されているのがジャーメイン良。この試合のジャーメインはサイドに流れてボール収め、二列目・三列目からの攻め上がりにおける時間とスペースの確保に大貢献して素晴らしかった。これだけ最前線でボール収めてくれるのはチームとしてとても有難い。

一方で、相手が主力完全温存の神戸であるため、手放しで評価はできず、ACL2およびリーグ戦での働きまで評価は保留といったところ。

だが、この試合において一番印象に残ったのは補強組ではなく、18歳・中島洋太朗の素晴らしさである。去年、リーグ・川崎フロンターレ戦における等々力で見た時以上の存在感と見事なパス連発具合に「これ、下手すると日本でプレーしてるの見られるの今年限りでは…?」という恐れすら抱かせる出来だった。

新戦力組のフィットしかり、新たな若手スターの更なる成長しかり、確実に今季の広島は優勝争いに絡んでくる強さ。

最大の課題は、昨季心底苦しんだ、リーグ、ルヴァンカップ、天皇杯、ACL2という全ての大会で主力を投入し続け、神戸ほどのターンオーバーを行わずに終盤一気に失速したこと。無冠に終わるのがおかしいほどの強さがあったが、あの過密日程に対するやりくりではある意味必然ともいえる失速だった。

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今季はスキッベ監督の基準をクリアする選手が一気に増えたこともあり、昨季以上のターンオーバー、過密日程対策がとれるのではないか。

ライター名:中坊

紹介文:1993年からサッカーのスタジアム観戦を積み重ね、2024年終了時点で997試合観戦。特定のクラブのサポーターではなく、関東圏内中心でのべつまくなしに見たい試合へ足を運んで観戦するスタイル。日本国外の南米・ヨーロッパ・アジアへの現地観戦も行っている(本記事は一週間後、中坊コラムに転載します)。

Note:「中坊コラム」 https://note.com/tyuu_bou
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