大人になった品田の我慢と成長
この日、前半24分にMF髙橋壱晟(いっせい)の右足スーパーボレーで先制した千葉だったが、後半7分に同点に追いつかれた。
品田は同17分からMF田口泰士に代わってボランチの位置で途中出場。「全体を見てオーガナイズするのが、大事な役割」と、こぼれ球をセーフティにクリアする場面とつなぐ場面を使い分けるなど、状況に合った的確なプレーでチームをコントロールしようとした。
すると千葉はボール保持の時間が増え、流れを手繰り寄せた。同32分には右サイドの髙橋からボックス内へクロスが供給され、大外で待っていたMF日高大(まさる)の元に。背番号67はこれを左足ダイレクトで合わせると、相手ゴールキーパーが弾いたボールを田中が右足で押し込み勝ち越しに成功した。
その後も千葉はゲームを支配し、試合は2-1で終了。公式戦3試合ぶりの白星に貢献した背番号44は勝利の要因について「我慢できたこと」だと分析した。
「(自分は)昔に比べて大人になったなと思いますね」とはにかんだパサーは、「自分の特徴を出しつつも、我慢しなければいけない日もある。いい塩梅(あんばい)を探してやり続けています。いま、慶行さんが言っている『チームとして大人になっていく』というのは、僕みたいな選手のタイプにとって大事なことなんです」と、勝利のためにエゴを抑えるプレーが自身の成長につながると信じている。
難しい局面での出場が多い背番号44だが、どんな状況でもチームを勝たせられる自信がある。J1復帰を目指すチームとして抱えるプレッシャーや控え選手として出場する難しさに立ち向かっている品田は、目の前の大きな壁として背番号4の存在を挙げた。
「ポジション争いをしている選手が、あの田口選手。(田口は)日本代表にも入ったことがあって、自分と同じ年齢だったときのことを考えると、実績の差がある選手です。だから自分が試合に出続けられるほど、甘い相手じゃないとも分かっている。ただ、そのような選手がいてくれたお陰で、自分がこの先どうやって生き残っていくかべきかを昨シーズンに見つけられました。
(自分は)年齢を重ねていくにつれて、チームをコントロールしなければいけないと思っている。ゲームの展開を見て、この後どうなっていくかというパターンを頭に入れておかないといけないんです。それが(J1)昇格には必要だと思います」と偉大なプレイヤーの背中を追う。
千葉は次節、今月13日の午後2時からアウェイの藤枝総合運動公園サッカー場で藤枝MYFCと対戦する。
品田は「古河電工(古河電気工業サッカー部)からの歴史は、自分たちも理解しているつもり。その歴史がある中で、いまは慶行さんを中心にすばらしいサッカーを作り出して、サポーターの方々も『面白い』と言ってくれるようになって、人が集まってくれる環境を作りだせている。だからこそ、自分たちが目指しているのは圧倒して勝つことなので、突き詰めていきたい」とクラブの誇りを胸に闘う。
リーグ戦開幕から7勝1敗と過去最高の好スタートを切ったが、選手たちは誰も慢心していない。J1復帰に向けて、まだまだ長く険しい道のりが待っていると覚悟しているからこそ、イレブン全員で目の前の1試合に全力を尽くす。
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千葉で経験している酸いも甘いも、すべてが品田にとっての財産だ。「『ここに来て良かった』と、いまでも言えますけど、(J1に)昇格して『本当に来て良かったな』と改めて最後に強く言いたいですね」とレジスタの内なる情熱が燃えている。
(取材・文 浅野凜太郎、写真 縄手猟