GK戦略のミス
まず第一点はゴールキーパーの補強戦略にミスがあったのではないかと考察する。
今季は昨季まで所属していた田中謙吾さんが昨季限りで引退し、GK立川小太郎が今季J2に昇格したFC今治へ完全移籍し、GK鹿野(しかの)修平がJ3栃木SCへ期限付き移籍した。
新たに加わったゴールキーパーはJ1川崎フロンターレから期限付き移籍で加入したGK早坂勇希(25)、東京国際大から加わった大卒ルーキーGK松本崚汰(22)であり、昨季韓国の大東税務高から加入したGKジュ・ヒョンジン(20)と合わせて3選手で今季を戦っている。
ただこのGKユニットは経験不足が否めない。なぜなら2024年シーズン終了時点でプロ公式戦出場数が3人合わせて1試合しかないからだ。
早坂は桐蔭横浜大時代に全日本大学サッカー選手権大会準優勝と大学ゴールキーパーNo.1の実績を引き下げて、アカデミー時代に育った川崎帰還を果たした。昨季J1第27節横浜F・マリノス戦(1●3)でプロデビューしたものの、公式戦はこのデビュー戦1試合のみだ。
昨季はベテランの田中さんや実力を発揮した立川、J2とJ3で出場経験のある鹿野とバランスが取れた選手層になっていた。
ところが今季は若手GKを引っ張る経験豊富なベテランがいなければ、早坂と競い合えるようなプロ経験がある同世代のライバルも不在であるため、チームが窮地(きゅうち)に立たされた際に若手だけで踏ん張らなければならない。
そして今季就任したGKコーチの松本浩幸氏は今季でJリーグ初挑戦であるため、プロクラブでのGKのマネジメントも未知数だ。
今季は無失点試合が1試合のみであり、すべての失点がゴールキーパーの責任ではないが、経験が足りない若手選手たちに託すにはタスクが大きすぎた可能性がある。
J2残留争いは毎シーズン骨肉の争いと思えるようなし烈な戦いを強いられる。苦境でも精神的支柱として引っ張る経験豊富なベテランやJ3などで活躍を見せる若手、中堅を新たに加えて高レベルな競争を提供できるようにフロントは動く必要があるだろう。
安定感があり、経験豊富な守護神がJ2残留のために必要不可欠と見られるが、夏の移籍市場で補強をせずに耐え切れるかは不透明だ。若手ゴールキーパー各々が奮闘しているが、精神的に追い詰められないようにフロントはサポートしてほしい。