因縁のスタジアムであふれた涙
試合は立ち上がりから拮抗。千葉が攻めれば、山形がカウンターで応酬する白熱の展開となった。
左サイドからのドリブル突破でチャンスを演出した椿は前半に2度の決定機を迎えたが、シュートはどちらもゴールの枠に阻まれ、思わず天を仰いだ。
「僕を含め、前半に何個も決定機があったので、もう少し楽に進められた試合だったと思う。そこは攻撃陣として、まだまだ物足りないと感じていますし、伸びしろだと思います」とイレブンは前半シュート8本の猛攻を見せるも、ゴールが遠かった。
千葉は先制点を奪取しようと、後半になっても攻撃の手を緩めず。リーグ戦3試合連続で無得点だったイレブンは変ぼうし、攻めれば得意のサイドアタックを披露。守れば全員が身を粉にして身体を張り続け、勝利への執念を燃やした。
決勝点は後半36分に右コーナーキックから生まれた。
プレースキッカーのMF品田愛斗(まなと)が放ったボールは放物線を描きながらファーサイドへ。これをDF河野貴志がヘディングすると、そのこぼれ球をDF鳥海晃司が左足でゴールに突き刺した。
千葉は最後までこの1得点を守り切り、山形から13季ぶりとなるシーズンダブルを勝ち取った。
試合後、背番号7のユニフォームをまとい、サポーターの前に現れた椿はあふれる涙をこらえきれなかった。
「サポーターはもちろん苦しかったと思います。中でやっている選手や監督、クラブのスタッフもめちゃくちゃ悔しい思いをしていた。(勝利して)サポーターの笑っている顔を見たときに、ぐっとくるものがありました。まだまだ試合はありますが、本当に“勝ち”ってうれしいと思いました。
なかなか勝てなくて、外にベクトルが向くことも多々ありましたけど、こうやってサポーターのみなさんが毎試合、毎試合背中を押してくれて、きょうもこれだけ集まってくれて、まずは1勝できました。僕たちの目標はまだまだ上にあるので、次のホームの試合もたくさんの応援をよろしくお願いします」と、重圧と闘っていたドリブラーが感謝を口にした。
次節は中断期間を挟んだ来月2日午後7時からホームのフクダ電子アリーナでいわきFCと対戦。2位に浮上した千葉は、今季開幕戦を2-0で制したいわき相手に再び勝利し、もう一度連勝街道を突き進みたい。
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「今年のチームはこうやって勝っていくんだ」と因縁のスタジアムを乗り越えたイレブンが、17季ぶりのJ1復帰に向けて再スタートを切った。
(取材・文 浅野凜太郎)
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