【巻物ルーニー】

ヘッドギア(ヘッドバンド)がまったく似合わないルーニーが姿を見せ、これまでのコンディションを考えれば、やはり文句なしの主力なのだな、と改めて感じずにはいられなかった。

インターナショナルマッチデー明け、コンディション調整はなかなか難しいが、どのビッグクラブにおいても日常であり、それを含めたチーム作りが求められている。

ラファエルの離脱にあたって、右サイドバックにはファビオが入った。正直何度見てもはっきりと顔だけであればラファエルとファビオの見分けがつかない。宗兄弟を見分けるよりも困難だ。安易にスカイラブハリケーンを、などと口走ってしまうことをお許し頂きたい。

ベンチには、プレシーズンで話題になったヤヌザイやザハ、そして移籍市場閉幕前に加入が決まったフェライニが入った。クリスタル・パレスは昇格組で、今はユナイテッドに所属するザハの古巣でもある。戦前から戦力差は明らかであったが、そういった相手に対して、チャンピオンズリーグとその後のダービーを控えてどう戦うのか、ということを考慮して見ることにした。

【そのままの戦術とそのまま課題、そしてキャリック】

これまでの3試合同様に、キックオフ後から前線から追いかけ、最終ラインを高く設定し相手を押し込んでいく。最終的なボールポゼッションはクリスタル・パレスが退場者を出したこともあり60%を越えていた。

ボールを持てば、ピッチをワイドに使いサイドアタックが多め。特にこれまで3試合と試合の進め方は変わらない。そして変わらないのはアタッキングサードでの連携と精度。この点はなかなか上手くいかずに、ペナルティエリア内での崩しにかかるプレーは幾度と無く噛み合わなかった。ただしそこに行くまでもこれまで同様に思い通りに進んでいることが多く、押し込んでいればゴリゴリこの力でその内に点は取れるだろう、という意図も見え隠れした。ただしこれにはヤングとバレンシアという崩しの一手に欠ける組み合わせで、質不足を感じずにはいられなかった。センターラインのクオリティを考えた上で、これだけのサイドからのアタックの頻度などを考えると、やはり質が落ちる、と今のところ言わざるを得ない。

結果や内容を見ても、押し込んでいる中からのチャンスメイクの数が物足りないのはここだろう。実際2点とも押し込んで獲った点ではない。いつブレイクスルーするのかは予測が突かないが、もしこのままの押し込みつつブレイクスルー出来たとすれば、ケチャップがドバドバ出る、という表現では足りないくらい面白いように点が獲れそうな気がしないでもない。

前回のコラムでも書いたが、モイーズのユナイテッドは前から追いかけることで意図的に精度の低いボールを狙い通り蹴らせて、高いラインがそれを回収してポゼッションを高く保っている。この試合、サイドバックの位置も高かったが、キャリックの位置の高さもかなりのものだった。昨シーズンまでのキャリックは、組んだセンターハーフにもよるが、センターバックに近い位置でボールを捌く役割が多かった。しかし今シーズンはそれまでとは打って変わって、前にガンガン出て行く。行けると思ったら両ウィングと同じ高さまで上がり、相手のセンターバックからセンターハーフに出るパスを狙っていた。個人的にはこの試合のマン・オブ・ザ・マッチに彼を選出したいくらいだ。それまでも優秀なプレーヤーの一人であったが、今シーズンさらに一つ上のステージに登った印象すら受ける。

【この試合でのキャリックの守備面での貢献】

 

 

【イスで背を向けるジャッジと試合展開】

よく流す主審だ、と思っていたらヤングが抜けだしたところをディクガコイが引っ掛けてPK&一発レッド。なかなか難しいジャッジであったが、ファン・ペルシーがきっちり決めて先制と後半の数的優位を獲得した。この判定に関して聞かれた試合後の会見でのホロウェイの様子が非常に面白いので、興味のある方はお調べ頂きたい。

後半は優位に立ったこともあり、追加点を狙いつつ、ヤヌザイや、フェライニをデビューさせることができた。ヤヌザイの仕掛けからFKをゲットし、ルーニーが素晴らしいコースに蹴りこんで追加点を奪い2−0で試合終了。もう少し数字が大きくても良いように感じたが、10点取っても勝ち点3が4に増えるわけではないので、悪い数字ではない。

【アフロは存在感の塊】

ピッチに立つ前からそのヘアーで存在感を放ちすぎていた。無理もないだろう、ユナイテッドのスカッドにおいて公称値で身長が最も高い上に頭髪まで含めれば2mの大台に乗る。少なくない観客が黒黒しいかつらを装着し、彼のデビューを待っていたことに驚きはない。私も東急ハンズなどで同じものを物色していたので、考えることに国境は関係ないなと改めて感じた次第だった。

プレーそのものは、流石にモイーズの元で長らくプレーしたこともあって戦術的な問題を抱えるように見えるプレーはほぼ見られなかった。連携的な部分でも、大きな問題があるような感じは見受けられず、今後もチームへのフィットはほぼ問題ないだろう。違和感の無さが逆に違和感だったほどだ。いきなり大きな不安は解消された、と見て問題無さそうだ。

フェライニが入ったことで気になった点がひとつ。ネガティブな点ではなくポジティブなことなのだが、ファーディナンド、ヴィディッチ、キャリック、フェライニ、と、センターのボックスを形成するこの4人の高さは、かなりのもので、相手のロングキックからのハイボール処理で不利に立つことはほぼ無いように思える。これは今の戦術からすると大きなプラスになることだろう。

もう一人、プレシーズンからいいアピールをし続けていたヤヌザイも自分らしさを存分に発揮していた。特にルーニーの素晴らしいFKを得たのはヤヌザイの仕掛けからだった。ボールを持てばわくわくするような仕掛けを試み、相手をバタバタさせて、それまでの両ウィングとは異なる「期待感のある」チャンスを生み出していた。

【徐々に徐々に】

完勝とは言えないが、様々な実験と実践の状況は悪くない様に思える。今後も重要な試合が続くからこそ余計に必要性がある。それだけにファン・ペルシーの調子がピリッとしないように見えるが、これも時間が解決してくれるだろう。 モイーズとユナイテッドの日々はまだ始まったばかりだ。2兎追って、2兎得ることを求められるクラブ故、難しいことだらけであることは百も承知なはずだ。もちろんモイーズはそれをしっかり考え、複数のタイトル獲得に向けたマネジメントしているように見える。もちろん香川もその一部であると考えられるが、一部のメディアや一部の方々はどうもそう感じていないらしい。「ベンチ外」という見出しに踊らされることなく、せめて半年程度経ってから判断することにしよう。香川も徐々に徐々に、大事に扱われているはずである。そうでなければ年明け前後には色々と動きが出るはずだ。無論私はそうは考えていないが。 結果は急に出はしない。タイトルは1日にしてならず。上質で美味な食べ物は1〜2分では作ることはできない。手間暇掛けて仕込み、いい素材を使い、適切な調理法を持って初めて作りだされる。いい素材も、調理の方法やタイミング、味付けを失敗すれば台無しになってしまう。

徐々に徐々に。最終的に最上位に居れば問題はない。成熟していく過程を楽しもうじゃありませんか。


筆者名:db7
プロフィール:親をも唖然とさせるManchester United狂いで川崎フロンターレも応援中。
ホームページ:http://blogs.yahoo.co.jp/db7crf430mu
ツイッター:@db7crsh01

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