・ザッケローニのコメントからうかがえる “変化”

 この2つの問いに対する答えは、ザッケローニのコメントから知ることができる。日本サッカー協会の公式サイトで彼は、

『相手に合わせず、自分たちのサッカーを出せる選手を重点的に選びました。ボランチのポジションを一枚多くすべきか悩みましたが、最終的には攻撃の選手をたくさん呼ぶことにした。主導権を握りながらサッカーをするためにはこのメンバーが正しいのではないかと考えたからです。』(http://www.jfa.jp/samuraiblue/news/00000783/)

とコメントしている。つまり、細貝の落選は戦術的な理由であり、“主導権を握るサッカー”のラストピースとなり得る存在が大久保なのである。もちろん、対戦相手との相性を考えた可能性もある。グループリーグで対戦するギリシャとコロンビアは堅守速攻を武器としており、日本にボールをあえて持たせる可能性が高い。大久保がポゼッションスタイルの中で輝くのは、川崎フロンターレに移籍してからの活躍ぶりが証明しており、引いた相手を崩すには大久保のスキル(動き出しの質の高さ、シュート技術の高さ)が必要なのだ。

ここで、読者の皆さんに思い出して欲しいのは4年前の南アフリカワールドカップのメンバー選出である。当時サプライズとして話題を集めたのは、フィジカルに恵まれたフォワードの矢野貴章。チームを率いた岡田武史は矢野の選出理由として、「長身を活かしたセットプレー時の守備」を挙げた。『なぜフォワードの選手にそれを求めるのか』と当時高校生だった筆者は疑問に思ったのだが、本大会の戦いぶりをみればその理由も納得だった。本大会直前にバランス感覚に優れた阿部勇樹をアンカーに配する4ー1ー4ー1へとフォーメーションを変更。自陣深くに守備ブロックを形成し、数少ないチャンスをモノにする堅守速攻へとシフトチェンジしたのである。

確かに、この戦術変更は功を奏し、大会前の予想を上回るベスト16入りを果たした。しかし、あまりにも守備的な戦いを見た筆者は『このままでは日本サッカーの進歩はない』と感じていた。あれから4年が経ち、サプライズの選出理由は180度変わった。『主導権を握りながらサッカーをするため』に大久保は呼ばれたのである。

この事実は紛れもなくポジティブな“変化”だ。この4年の間にインテル、マンチェスター・ユナイテッド、ミランといったビッグクラブでプレーする選手が現れ、イタリア、ベルギー、オランダといった強豪国とも互角に渡り合えるようになった。少なくとも4年前には考えられなかったほど、日本サッカー界のレベルは向上した。大久保のサプライズ選出、つまりアタッカーが多く招集されたということは、日本代表が胸を張って主導権を握るサッカーを展開できるようになったことを暗示している。

もちろん、ブラジルワールドカップで日本が主導権を握るサッカーを本当に披露できるのかは分からない。ただ、メンバー選考の時点でコンセプトを明確にし、それに沿った23人を選んだのは事実である。個人的な願望としては、直前の戦術変更があった前回大会の二の舞は避けて欲しい。筆者が観たいのは、それぞれに異なる武器を持ったアタッカーたちが有機的に絡み合う攻撃的なサッカー、ただそれだけである。

written by ロッシ 2014/05/17


筆者名:ロッシ

プロフィール:エル・シャーラウィ、ネイマール、柴崎岳と同世代の大学生。鹿島アントラーズ、水戸ホーリーホック、ビジャレアルを応援しています。野球は大のG党。
ツイッター: @antelerossi21

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