先月、来年の国内1部リーグを30クラブによる1ステージ制で戦うという衝撃的な発表をしたアルゼンチンだが、その後の計画もなかなかメチャクチャだった。
これまでアルゼンチンはビッグ5(ボカ、リーベル・プレート、インデペンディエンテ、サン・ロレンソ、ラシン・クラブ)を優遇するため、3シーズンの平均獲得勝ち点率*により2部降格を決めるという、非常に分かり難いシステムを採用してきた。しかし近年、リーベル、インデが降格の憂き目に遭い、昨シーズンにはラシンも苦戦。
その度にアルゼンチンサッカー界の大物達は“ウルトラC”によるビッグクラブ救済策を提案し周囲を戸惑わせてきたが、今回、今年春に打ち出された際には誰もが半信半疑だったこの計画が実行されることになった。
*昇格チームはそのシーズンのみの平均獲得勝ち点率となる
2015シーズンのシステムとは
まずは2015シーズンのシステムを改めておさらいしておこう。
従来、アルゼンチン1部リーグは秋春2ステージ制*を採用し、20チームによるホーム&アウェイ2回戦総当たりの38試合が行われてきた。ただ2015年は春秋1ステージ制を導入するため、現在行われている2014年下半期のリーグは半年で終了。降格はなく、2部から大量10チームが昇格する。
そして2015シーズンは30クラブが1回戦総当たり29試合と、ボカ対リーベル、ラシン対インデペンディエンテのように興行的にも盛り上がる“クラシコ”を1試合付け加え、2月から12月までの間に30試合を戦う。ライバル同士の試合が加えられるのは、コロンビアなどで採用されているシステムである。
このシーズンは過去4シーズンの平均獲得勝ち点率から2チームが降格し、2部から2チームが昇格することになる。
1回戦総当たりでどちらにホームが割り当てられるか分からないため、どう考えても不公平感の残るシステムであろう。そのため、1966年以来49年ぶりに復活する春秋1シーズン制はこの年で終了する。
*南半球なので正確には季節は逆である
その後の計画とは
2016年に入ると今度は上半期に半年間のリーグ戦を行う。ここでは30チームを2つのグループに分けて戦い、3チームが2部に降格、1チームが昇格するとのことだ。
そして再び秋春制が復活し、2016-17シーズンから28チームによる通常のリーグ戦となる。ここから毎シーズン、4チーム降格2チーム昇格で2チームずつ減らしていくこととなり、2017-18シーズンに26チーム、2018-19に24チーム、最終的には2019-20シーズン開幕までに22チームに削減する計画だという。
つまり、2015年の春秋1シーズン制導入は協会のいう「欧州のカレンダーに合わせる」ための一時的な準備期間というわけだ。しかしながら、2ステージとはいえ現時点でも秋春制なのだからそのままでもいいと思うのだが・・・。過去を踏まえれば、計画通りに進むかどうかは疑わしいところだ。
日本への影響は
本日、ガンバ大阪の2005年以来9年ぶり2回目となる優勝で幕を閉じたJリーグは、来シーズンより2004年以来となる2ステージ制に移行する。1ステージ制移行後の初代(1996年を除く)、そして現時点では最後の優勝が共にガンバというのも皮肉なことであろう。
2ステージ制の回帰に関しては賛否、というよりほとんど反対の声が上がっているが、その根拠の1つともなっている中南米の2ステージ制のうち、来年より強国アルゼンチンが2ステージ制を廃止することとなった。しかし今回、ここで記した内容を見れば参考になるとは言い難い。
Qolyでは特にどちらが正しいとは主張していない。中南米では半年ごとのシーズンが成立し、確かに盛り上がっている事実もあるからである。もちろんその国民性も違えば、南半球は季節も反対なので一概には言えない。ただ一つ、アルゼンチンのように一部のクラブを優遇するための手段・口実としてではなく、選手、関係者、メディア、サポーターがきちんと協議したうえで、最後は誰しもが納得もしくは了承する形で丸く収めてほしいと願うばかりである。