いつも通り成長するために必要な「認知」
一方、ホームで完封負けしたバニーズだが、伊賀に敗れた後「もっと頭を使ってプレーしないと」と、話したMF林咲希。今季からアンカーを務める彼女はこの日、時より最終ラインに下がってボールを捌いた。
「相手が2トップなら最終ラインには3人いればいい」という千本監督の考えを基に、林やCBの石井咲希(上記写真:中央)や山本は、普段の練習から準備してきたパターンや循環を状況に応じて選択し、考えながらプレーした。ミスからGKと1対1の場面を与えるプレーがあってもトライし続けた。
いや、いくら最終ラインでのボール回しとはいえ、サッカーの試合の局面で選手が「考えている」のは、せいぜい1秒くらいの長さだ。実際には「考えている」というよりは、「直感」でプレーを選択している。
そう考えるとサッカーのプレーは、車の運転に似ている。我々が車を運転している時に、「考えている」のは、運転以外のことが多いはずだ。信号や道路標識を見て運転を操作するのは、ほとんど「条件反射」に近い。いちいち道路標識に出会ってから教則本で確認している時間などあるわけがなく、もし標識を覚えていないなら車を運転するのは危険だ。
サッカー選手はピッチの中でいろんな信号や標識に出くわす。今季から2部に昇格して来たバニーズの選手たちにとっては、初めて見る標識もあったかもしれない。完敗した伊賀戦は、「あの標識はなに?」と考えている間にボールを奪われてしまうような試合だった。
しかし、この日は林の母校・日ノ本学園高校の先輩・千葉が、後輩・林について「もともと足下の技術が高かったんですけど、あんなに落ち着いてプレーしているなんてビックリしました」と言葉にしていた。同様のことは、新人ながら定位置を奪っているMF小川にも大きく当てはまるだろう。
自動車教習所では、目視(認知)・判断・実行が運転の手順だと教えられた。サッカーのプレーに置き換えると、しっかりと「目視(認知)」して、状況を「判断」することで、良いプレーが「実行」される。
元スペイン代表MFシャビ・エルナンデスはこれでもか?と思うほど首を振り続けて「目視(認知)」しているが、ボールを受けてから「判断」して「実行」するまでの早さを見ていると、如何に「目視(認知)」が大事なのかが伝わって来る。
いつも通りに車を運転しているだけでも、いつの間にか運転がスムーズになっていくように、なでしこリーグ2部という道路を初めて走っているバニーズの選手達も、いつも通りに成長している!
あとはその成長を再開されるリーグ戦で結果に変えていくだけだ!
バニーズ京都SC 今後3試合の日程
≪プレナスなでしこリーグ2部≫
→全10チームによるホーム&アウェイの2回戦総当たり戦。優勝チームは1部自動昇格、2位はなでしこ1部9位チームとの入替戦。最下位は2部自動降格、9位はチャレンジリーグ(3部相当)2位チームとの入替戦。
第3節、4/28 (土)13:00静産磐田VSバニーズ@エコパ
第4節、5/3 (木) 15:00 S世田谷VSバニーズ@武蔵野
第5節、5/6 (日)13:00 バニーズVSニッパツ@亀岡陸上
筆者名:新垣 博之
創設当初からのJリーグファンで女子サッカーやJFLを取材するフットボールライター。宇佐美貴史やエジル、杉田亜未など絶滅危惧種となったファンタジスタを愛する。趣味の音楽は演奏も好きだが、CD500枚ほど所持するコレクターでもある。
Twitter: @hirobrownmiki