パラダイムシフトで薄まった「湘南スタイル」
湘南はJリーグが公表している1試合平均の総走行距離やスプリント数(時速24km以上で1秒以上のダッシュ)において毎年のようにJ1トップを競っていたが、近年は中位に止まっている。
ただ、数値自体は上がっている。つまり、リーグ全体の傾向として走力が上がっており、尖っていたはずの湘南スタイルはトレンドの変化によって特徴が薄くなっていたのだ。
Jリーグにこのような戦術のパラダイムシフトが到来したのは、湘南と同じ神奈川県に本拠を置く横浜Fマリノスにアンジュ・ポステコグルーという黒船が来航したことが大きい。
マンチェスター・シティの傘下に入ったことにより、横浜Fマリノスは欧州サッカーのトレンドをJリーグに持ち込み、彼等の2019年のJ1制覇をキッカケにJリーグ全体が現代サッカーのトレンドを強く意識し始めたのだ。
もっとも、2018年のルヴァン杯決勝では、その黒船ポステコ号を撃ち落としたのが、他ならぬ湘南だったのは皮肉な限りだ。
2019シーズンの途中、曺監督はパワーハラスメント問題によって退任したが、戦術的にも行き詰まりを見せていた。遅かれ早かれ、別れの時は近づいていたのかもしれない。
2019年以降、湘南は16位、18位、16位と低空飛行を続けている。ただ、湘南スタイルの全盛期にも曺監督は「J1に住民票を置くこと」と独特の表現でJ1定着を目標にしていた。2010年代にJ2降格を3度経験していることを忘れてはならない。