光が見えた磐田戦の先制点

前述した通り、ビルドアップの質が決して高いとは言えないなかで、V・ファーレン長崎が課題を解決するためにどうしていくべきか。解決策となり得るのが、前線へのロングボールを増やすことだ。

長崎が自陣深くでビルドアップを開始した際、相手はその動きを分断しようとプレッシャーをかける。自軍のアタッカーがハイプレスを仕掛けるため、相手はディフェンスラインを押し上げて全体をコンパクトに保とうとする。そうなれば、おのずと敵陣にスペースが生じる。

そのスペースに最終ラインからロングボールを送り込み、一気に攻め込めれば、手薄な相手DFラインを突くことが可能となる。第18節・ジュビロ磐田戦での先制点はまさにこのパターンから奪ったもので、文字通り理想的な形だった。

ロングボールのターゲットには、エアバトルに強いフアンマ・デルガド&都倉賢という適任者がいる。トップ下で起用された選手がサイドに流れて、ボールを呼び込む動きで起点となる形も効果的だろう。クレイソンと澤田崇は機動力があり、加藤大には走力がある。

敵陣深くにロングボールを送り込み、そのボールが相手に回収された場合は、最終ラインを素早く押し上げて連動したプレスを仕掛け、ショートカウンターを狙っていく。多くの運動量が求められるゆえ、90分を通して実施するのは現実的ではない。あくまでも状況を見てという形になるが、相手を押し込むことが目的だ。

「セットプレーおよびロングスローというストロングポイントが存分に発揮されているとは言い難い」と前項で述べたのは、この点が関係してくる。つまり、敵陣深くに押し込むことができれば、必然的にセットプレーやロングスローのチャンスもより増えるはずで、今以上に強みを生かすことができると見る。

相手がロングボールを警戒してハイプレスを選択しない場合は、ビルドアップから丁寧に崩していく形を取る。もちろん、つなぎの局面での課題はあるが、相手のプレッシャーが軽減されれば落ち着いてボールを回すことができ、不用意なボールロストは減るだろう。ロングボールを用いて緩急をつけたパス回しが実現できれば、相手に守備の狙いを絞らせない戦い方が可能となる。

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最終ラインからのビルドアップを基本的な約束事としつつも、状況に応じてロングボールを用いて押し込む。J2屈指のタレント力を誇る長崎であれば、選手起用にて課題を解決することは容易だろう。

攻撃のバリエーションを更に増やし、安定して勝ち点を積み重ねた先には、6シーズンぶりとなるJ1の舞台での戦いが待っている。

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