変ぼうするイラクリーグと熱狂

イラクリーグは近年劇的な発展を遂げている。昨年6月4日にイラクサッカー協会は自国リーグのプロ化を推進するために、スペイン1部ラ・リーガとの3年間のパートナーシップ契約を締結。イラクのスタジアム、練習環境インフラの強化、技術面でのアドバイス、育成面の強化、マネジメントの指導など多岐にわたる面でラ・リーガのノウハウを取り入れる形でサポートを受ける。字羽井はこの変化を肌身で感じている。

――イラクの1部リーグはプレーしていかがですか。

自分が最初に行った当初といまのイメージはだいぶ変わりました。行った当初は毎試合ボールが違ったり、スタジアムは(ピッチコンディションが)最悪のグラウンドがあったりと…。その中でも選手個人のフィジカルなどはレベルが高かったですね。ただ環境面がひどかったですね。

ただいまはイラクリーグがラ・リーガと提携を結んで、ラ・リーガが使用しているボールを使っているんですよ。ラ・リーガが認めたスタジアムじゃないと試合できなかったりと。(提携は)今年からなんですけど、契約の媒体も全部変わりました。毎年レベルは上がってきていますね。

――そんな劇的な変化があったんですね。

そうですね。もともと1、2年前から徐々に良くなってきていましたね。イラクのサッカー会長が代わって、いまの(アドナン・ディルジャル)会長が「イラクを強くしたい。昔のイラクのイメージを取り戻したい」という方なのでイラク国内にすごく力を入れています。

それから国内のレベルがすごく高くなっていて、アジアチャンピオンズリーグではアル・クウワ・アル・ジャウウィーヤが(元フランス代表のFWカリム・)ベンゼマがいるアル・イティハドに勝って、ウズベキスタンのアルマリクに勝ちました。AFCカップではアル・カーラバーがヨルダンのチームに勝って、クウェートで有名なアル・クウェートに勝った。レベルは急激に上がっていると思います。

――字羽井選手のnoteでは、イラクの外国籍選手がほとんどアフリカ人と書いていましたけど、それは現在もですか。

結構変わってきています。いまはアラブ人、ブラジル人も来るようになりました。今年は適用されていないんですけど、来年からFIFAランキング90位以下の国は2選手までみたいなラ・リーガの規定があるそうですね。

――イラクと日本とのサッカーやカルチャーで驚かれたことはありますか。

カルチャーでいえば、国民一人、一人がサッカーをすごく好きなんですよ。だから1試合の勝ち負けでだいぶ環境が動かされるというか。それこそ勝ったときはすごく喜びますし、負けたときのサポーターのがっかりした姿やメディアの書き具合は日本じゃ考えられないくらいボロクソに言われますね。

サッカーの人気だったら日本より確実に人気があると思います。アラビア語でアル・カリージ(ガルフカップ)は、カタール、イラク、オマーンらと地域のカップ戦がイラクで開催されました。イラクは決勝まで行って、(2023年のガルフカップ決勝で)イラクがオマーンと試合して勝ったんですよね。7万人が入るスタジアムに5時間前なのに10万人が来ました。みんな入れなくなっちゃうぐらい国民のサッカーに対する熱がすごく高いです。

国内カップ戦のPVに集まるイラクのサポーター

――想像を絶する熱さですね。

ただ自分が去年在籍したチームが負けたらサポーターにボロクソ言われて、フェイスブックにめっちゃ書かれました。インスタグラムにもいっぱいメッセージが来ましたね。日本だとあるんですかね。

――日本ではあまり聞かないですね。

負けたときにめっちゃサポーターから野次を飛ばされたりしますね。本当にサッカー熱をすごく感じます。

――イラクでの印象深いエピソードがあったら教えてください。

それこそサッカー熱ですね。自分たちのチームがアウェイ戦で3、4万人入って満員になったんですけど、自分たちが1-0で勝ったんですよ。ピッチ内で喜びを分かち合っていたらサポーターが入ってきて、ダッシュでロッカールームに帰ることがありましたね(笑)。

ペットボトルや爆竹を投げられたことがあって、エピソードとしては印象深いなというかすごいなと思いました(笑)。

――クラブレベルの人気もすごいですね(笑)。

そうですね。むしろサッカー以外あまり人気がないというか…(苦笑)。(他の娯楽も)あるんでしょうけど、ほとんどの国民がみんなサッカーが好きというか。町を歩いていればヨーロッパサッカーがテレビで流れています。