スタメン奪取こそが秋田への恩返し

千葉の小林慶行(よしゆき)監督から「やるべきことをやってこい」と背中を押されてピッチに立った河野。前線からの守備がハマらず、秋田に押し込まれる難しい状況での投入だったが、ファーストプレーで力強く相手選手にタックルし、ファウル覚悟で攻撃の芽を摘んだ。

しかし背番号28が与えたフリーキックから千葉はチャンスを作られてしまった。ゴール前に放り込まれたロングボールを必死にクリアした千葉だったが、セカンドボールを秋田に回収されてしまい、最後は後半43分に秋田DF畑橋拓輝(はたはし・ひろき)に右足ダイレクトシュートを決められてしまった。

「正直、僕のミスでもあると思う。相手が跳ね返してくるボールに対して引いていたらダメだし、ファーストで負けたんだったら、セカンドのところは距離を詰めないといけない。クリアするときにラインを上げないと相手の思うつぼですし、そこはすごく意識していましたが、自分がもっとやらないといけない」と反省点を口にしたが、下を向いている暇はなかった。

パスの出しどころを探す河野

1得点を返し、なんとかして同点に追いつこうとロングボールを中心に攻め立てた秋田イレブン。河野は古巣の思い通りにはさせまいと、打点の高いヘディングでボールを跳ね返し、身振り手振りを交えながら味方に指示を送り続けた。

後半47分には背番号28がインターセプトからチャンスを演出した。相手選手に身体を当てて、ボールを回収した河野がドリブルで前進すると、ボックス前にいたMF横山暁之(あきゆき)へ縦パスを供給。シュートは打たせてもらえなかったが、“らしさ”が出たプレーだった。

「あの時間ではゼロに抑えるためにセーフティーにやらないといけない。でもあの高い位置でインターセプトをして、ヨコ(横山)に出したパスは自分の良さでもあると思うので、あのようなプレーを少しの時間でも出していければ、もっと良くなっていくと思います」

試合はそのまま3-1で終了。クリーンシートこそ達成できなかったが、古巣に対して意地を見せた河野は秋田サポーターに向かって深々と頭を下げた。

高精度のロングキックを放つ河野

「(秋田のファンに)挨拶できずに出て行ってしまったので、すごく温かく迎え入れてくれたことが本当にうれしかった。秋田には感謝がたくさんありますし、本当に秋田がずっと大好きです。その人たちに対して『自分はこれだけやれるんだ』というのを示すことが一番の恩返しになると思っています」と北国で培った経験と自信の一端を見た。

キャプテンの鈴木とJ1セレッソ大阪から帰還したDF鳥海晃司がレギュラーを張る千葉のディフェンスライン。「簡単に出られると思っていないし、挑戦する気でここに来た」とスタメン争いへの決意を口にしていた河野は、「あの二人に任せっきりになっている感じもある。あの二人を追いつき、追い越さないと、自分としてもチームとしても成長はないと思っています。僕にないものを持っている二人から盗みながら、自分にむちを打ってやるしかない」と、さらに成長した姿をサポーターたちに披露したい。

千葉は次節、29日の午後2時にえがお健康スタジアムでロアッソ熊本と敵地で対戦する。

「利き足は頭」と呼べる選手を選んでみた

河野貴志の本領発揮はここからだ。秋田の吉田謙監督から「貴志ならできる。もっと試合に出てほしい」とエールを贈られた背番号28は「うれしいことではありますけど、悔しいことでもある。そうやって言ってくれる気持ちを大切にしながら、また次の一戦に臨んでいきたい」と逆境を跳ね返してみせる。

(取材・文・写真 浅野凜太郎)

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