兄と目指す夢の先
これまでフィリピン代表で公式戦17試合に出場したビスマルクは、右サイドバックを主戦場に攻守の要としてチームをリードしている。昨年12月から今年1月にかけて開催された東南アジア最強代表チームを決める大会AFF三菱電機カップでは全6試合にフル出場した。
「個人としては全試合フル出場できたことがまずプラスだと思っています。結果的に1アシストでした。ディフェンスの面で東南アジアはすばしっこい相手が多いので、70分くらいからの守備をどうするかという課題は今後また探していかなきゃいけませんね」
所属クラブの意向により兄ジェファーソンを欠いたフィリピン代表は守備面が不安視されていたものの、ビスマルクの奮闘により大会は4強入りを果たした。準決勝でタイ代表に延長戦の末敗れたが、東南アジアの戦いにも順応しつつある。
フィリピンはボクシングとバスケットボールが人気であり、サッカーの人気はそれほど高くないという。それでも大会での躍進によりサッカーの注目度が高まった。ビスマルクは国を背負って戦う経験は財産になっていると胸を張る。
「国を背負って戦うということはどんなに観客がいても、いなくても緊張しますね。クラブチームと代表とでは全然重みが違うと感じています。『フィリピン人のために戦う』と自分は考えていなくて、『フィリピンをサッカー大国』にしたいと思ってやっています。だから三菱カップは大きかったですね。多くのフィリピン人がちょっとずつ自分たちを信じてくれたのでうれしかったです」と白い歯をこぼした。
兄ジェファーソンはいまの弟の姿を見て「ほぼ毎日連絡を取っていますけど、彼が戦っている2部リーグは過酷です。昨夏にステップアップを試みたと思うんですけど、うまく話がまとまらずという感じだったので、頑張ってほしいです。
試合に出て、経験を積むことはすごく兄として誇りに思います。立ち直る姿にすごく刺激を受けているのは確かです。そのお陰で僕も頑張ろうと思います」とビスマルクの存在から刺激を受けていた。
兄とともに目指す先は同国が未だたどり着いていない世界の祭典だ。FIFAランキング146位(今月20日時点)と現在の実力はアジア諸国の中では下位に位置しているが、このサッカー発展途上国を自分たちが強くすると覚悟を決めている。
「兄貴と代表のときに毎晩のように話しますけど、『俺たちが代表で現役でいる間にワールドカップに出られたらいいな』と言っています。『俺らがやるしかないな』という感覚でいまはやれている。成長につながると信じているので、最終的な目標はフィリピンをワールドカップに連れていくことですね」とビスマルクが宣言すれば、
「もちろん、まず最初に一番大きい目標がワールドカップ出場だと思っています。その次がアジアカップ。このアジアカップに出るというのは、いまのフィリピンのメンバーと弟で一緒にやれると思っています。まずはそこを目指して、 フィリピン代表の全盛期を築いて一緒に挑みます」とジェファーソン。
兄弟は『自分たちならやれる』と結束を強め、夢の先へ行こうと日々高め合っている。