■基本戦術<守備>

現在の代表において、ル・グエン監督の色が出ているところは、攻撃面よりも守備面。リヨン時代にも選手達に求めていた「攻守の切り替えの速さ」、「前線からの守備意識」は、カメルーンにも定着しつつある。ル・グエン就任時からその連動性と連続性は向上の一途を辿っており、現在のそれはかなり高いレベルにまで達している。

その様子が顕著にわかる映像をいくつかピックアップしてみたい。

中盤でボールロストした後、すぐに右サイドバックのジェレミ(8番)がボールホルダーにアプローチ。それにより、パスコースを読んだエトー(9番)がパスの出た先をチェックしボールを奪ったシーン。

ここで注目したいのは、ジェレミとエトーの関係だけではなく、他の選手も連動したポジショニングを取っていること。2人だけの動きであればプレッシングが成功したとは言い難いが、アデバヨールのところにもきっちりエンゲモがマークに入っており、効果的にパスコースを絞り込むことに成功している。

アフリカ人選手と言えば、本能的にプレーすることが多く相対的に戦術成功率が低い選手が多いという印象があるが、この代表の3トップに関して言えば、どの選手も高い運動量、守備意識、献身性を備えている。

例えばエトーは、バルセロナ時代にメッシを一番活かした黒子とも言われており、チームのために必要に応じてはバックラインまで帰って守備に参加するほど。エマナも元々はボランチの選手で、FWにしては高い守備技術を備えている。

ウェボについては、他の選手に比べ積極的なチェイシングをこなせるプレイヤーであり、最前線からサイドバックをそのまま追尾してボールを奪い返した下の映像のような働きを期待するル・グエンが、W杯のような舞台では積極的に起用する可能性は高いと言える。(最後にボールをカットした15番がウェボ)


しかし、そのプレスに穴がないというわけではない。上記のような積極的プレスが発動できる時間帯は、前半から使用した場合20分程度。後半開始と同時にやや復活するが、これも早い段階でプレス強度が弱まり、以降はバラバラのチェイスが増加するのが特徴だ。

さらに言えば、この組織的な守備から得点まで至ったシーンは皆無。高い位置で奪ったものの、そこからの精度が低く、個人技に走るケースも多いために、せっかくのショートカウンターを活かしきれていないのが実情だ。

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