“シアラー2世”か、“第二のダンカン・ファーガソン”か。かつてニューカッスルで活躍した二人の偉大なストライカーの特徴を併せ持ったアンディ・キャロルは、21歳にして伝統あるニューカッスルの背番号9を背負い、11月10日時点で7得点を挙げて得点ランク1位におさまっている。
ここ数日、ファビオ・カペッロ監督はイングランド代表に彼を初招集するという報道が過熱している。大手メディアのほとんどがキャロルについての特集記事を組み、彼がイングランド代表に値するかどうかを論評。デイリーメールに至っては、J.レドナップ(元リヴァプール)ら著名人が連日のようにキャロルの有用性を説き、まるで社を挙げてのキャロル・フォー・イングランド・キャンペーンをやっているかのようだ。
キャロルがここまで取りざたされるのは、彼がイングランド代表に長年いなかった「本格派のプリマ・プンタ(第一FW)」の能力を持っているからだ。キャロルの肉体的強靭さ、打点の高いヘディングは、まさしくビッグ・ダンクことファーガソンを彷彿とさせる。ボールをセットすれば左足から矢のような強烈なシュートが飛んでいく。ここ数年イングランドにいなかった、足でも頭でも得点が取れる人材だ。また、彼はポストマンとしても有能で、味方の拙いパスを正確にコントロールし、味方に裁いていく姿はかつてのシアラーに近い。スペック的には、ルーニーのパートナーとしてキャロル以上の人材はいない。
だが、問題は振る舞いも“ファーガソン2世”なことだ。昨シーズンは交際相手をめぐってチームメイトのS.テイラーと練習中に殴り合い、骨折。今シーズンはU21代表監督のS.ピアースと殴り合いを演じ、さらに元彼女を襲ったとして逮捕。終いには車を放火されている。こうした狼藉で自らのチャンスを減らしている一方で、メディアや周囲からは甘やかされているキャロル。彼が性根を入れ替えて、世界的なFWになるよう努力するのか、それともスタン・コリモア(元イングランド代表)のような道を辿るのか―数年後が楽しみだ。
マーティン・オニール監督の突然の辞任はアストン・ヴィラに衝撃を与えたが、辞任によってチャンスを得た選手もいる。ユース上がりの小柄なパサー、バリー・バナンがその一人だ。
2010年11月のフラム戦でリーグ初先発を果たすと、視野の広さ、思い切りの良さ、正確なパスをいきなり発揮。ダイレクトパスを多用したゲームメイキングで、ペトロフの穴を埋めた。圧巻は前半41分。左サイドからパスを受け取ったバナンは、ワンタッチで逆を向くと大きくテイクバックをとり、逆サイド深くに気合い一発のロングパスを敢行。フラムの左サイドバック、カルロス・サルシドの裏を突き、マーク・オルブライトンのゴールをアシストして見せた。
また、両足からのダイレクトパスでサイドの攻め上がりを促し、攻撃のリズムを構築。今までのヴィラにはいなかったゲームメイカータイプのMFとして、期待を持たせるデビュー戦だった。昨シーズンはブラックプールで昇格に貢献しており、実戦での経験も豊富なだけに、層の薄いヴィラの中盤を大きく強化しそうだ。
昨シーズン満を持してトップチームにデビューした、セルティックの至宝。トップスピードでもボールコントロールが乱れず、柔らかいタッチとボディシェイプだけで次々と相手を抜いていく。抜いてからのクロスも非常に正確で、さらにモーションも小さいためディフェンスにとっては非常に守りにくいものになっている、
プレシーズンマッチでは、リヨンのDF陣を圧倒。シーズン開幕してからも4試合連続で起用され、2得点を決めた。
“ジダン2世”―2007年にランスからイングランドにやってきたアデル・ターラブを、メディアはそう評した。この陳腐な言い回しをそのまま信じる者は、たとえトッテナム・ファンの中にさえいなかっただろう。ただ一人、ターラブ本人を除いては・・・
自らの才能を過信したターラブは、ピッチの中でも外でも傲慢な振る舞いを繰り返した。試合では周囲を全く意に介さず、独りよがりなドリブルを連発。ファンデ・ラモス監督の信頼を得られず、出番は徐々になくなっていった。ローンに出された先のクイーンズ・パーク・レンジャーズ(以下QPR)で活躍すると、ターラブはさらに増長。「スパーズと契約するんじゃなかった。アーセナルに行ってればよかった。スペインのビッグ4に行きたい。あの辺りのチームとはコネがあるし、彼らが僕をほしがっているのも知っている。トッテナムが早く売ってくれればいいのに」とまで発言し、スパーズに戻る道は失われてしまった。
現在、ターラブはQPRで絶好調。8月にはリーグの月間最優秀選手賞を受賞し、プレミア昇格を目指すQPRを支えている。モロッコ代表でも10番を背負い、ようやくプレーが口に追いついてきた“天才”ドリブラーは、彼の頭の中にいる自分自身に追いつけるのだろうか?