UAEのリーグカップに当たるエティサラット・エミレーツ・カップ。12チームを2グループに分けてリーグ戦を行い、1位同士が一発勝負の決勝戦に臨む。今日29日の夜にモハメド・ビン・ザイード・スタジアムでファイナルの日を迎える。今季勝ち上がったのはアル・アインとアル・シャバブの2チーム。前者はリーグで苦戦しているが、後者は3位と好調を見せている。

その原動力となっているのがブラジル人MFのシエウ。彼が1月にチームに加入してからアル・シャバブは公式戦7勝3分け2敗と好成績を上げており、リーグ戦では12月以来無敗を続けている。ACL出場権獲得も現実的になってきた。

ただ、最初は決してシエウは歓迎されてはいなかった。と言うのも彼はここ2シーズン、規律違反やアルコールの問題によって7つものクラブを渡り歩くことになっていたからだ。最後に彼を獲得していたASAというクラブの会長は「彼は素晴らしいプレーヤーだが、ピッチを離れたときの振る舞いが問題だ。いくつもチャンスを与えたが、結局アルコールをやめなかった。だから放出した」と公に語るほどである。

しかし、アル・シャバブの監督を務めていたパウロ・ボナミゴは彼をUAEに呼び寄せ、「私が父親になるよ」と語って受け入れた。そして、ようやくシエウに輝きが戻ってきたのである。

シエウは遅咲きのプレーヤーだ。カルアルの農家の元に生まれた彼は「サッカーをすることは出来なかった。ピッチの上にいるのが見つかったら父に殴られるんだ」と言う。さらに10歳の時には父が亡くなり、農場の動物を失い、仕事を探すことになる。そこで彼を助けたのがサッカーであった。15歳の時、兄が地元のクラブのトライアルに連れて行ったのである。

「そのテストに合格したんだ。それが僕がサッカーを始めたきっかけだ」

波瀾万丈な生い立ちを持つシエウは、訪れたチャンスをなんとしても掴みたいと願っている。

「こういう機会を与えてもらったのはとても嬉しい。最大限に活用したい。これは僕の新しい旅立ちだ。妻と娘もUAEに来る予定だし、全ての準備が完了するよ。みんな僕たちを温かく歓迎してくれていて、良い関係を築けている。厳しい試合に向けて気持ちは高まっている。神に感謝して、良い結果が出ることを期待している」
「高いモチベーションを維持できているから、良い順位で終わりたいし、明日は出来ればタイトルを取りたい。リーグでは12月から負けてないんだ。決勝戦でもこれが続くといいね。アル・アインはリスペクトしているが、最善の努力をして望むよ」
「韓国では-18℃を経験した。けれどドバイの気候は僕が生まれ育った町に似ている。北東の暖かい場所だったから、こういう天候には慣れている。いままで行った全ての場所の中で一番早く適応できた。契約は6月までだが、ここでプレーを続けたい」
「多くのことを経験した。良いことも、悪いことも。けれども、課題への対処には満足しているし、幸せだ。神はいつでも新しいチャンスを与えてくれる。僕は今与えられた機会を生かしたい」

(筆:Qoly編集部 K)


【厳選Qoly】日本代表、「初招集」と驚きの「電撃復帰」があるかもしれない5名