リーグ戦でも不調をきわめているシャルケがどのような戦いを見せるかということが筆者にとって注目の一つであった。

リーグ戦ではCL圏内の4位までに入れれば御の字という状況の中CLで少しでも勝ち進んで賞金を得たいであろうシャルケはどのような選択をするのか。まずケラー監督になってから攻撃も守備もいる選手たちと戦術がまったくかみ合っていないことが不調の要因の一つである。特に攻撃のほうではエース、フンテラールを怪我で欠く中、プッキやファルファンにワントップを任せている状況。この一戦ではフンテラールがようやく復帰し、多くのサポーターが、久しぶりに“良いシャルケ”が見られることを期待しただろう。そして、一方のガラタサライは大型補強がどこまで実るかを占う一戦であった。

リーグ戦とは打って変わって、シャルケは上々の立ち上がりを見せる。アウェーでしかもトルコという難所ながら序盤からボールを支配し優位に進める。シャルケのほうの組み立て方としてはワイドに広げていきじわじわとボールを前に進めていき前線に当て、そこから中央突破や外にはたいてサイド攻撃というものであった。フンテラールというポストプレーの能力に長けた選手が戻ってきたことによってスムーズに前にボールを進めることが可能になった。

また、ここでガラタサライの守備があまりにもお粗末であったことをしっかり記しておきたい。シャルケがワイドに広げたときガラタサライのボランチは自由にチャレンジしていくので、中央にギャップが生まれスペースができるという状況が頻発する。しかし先制するのはガラタサライで、シャルケのビルドアップのミスをついて生まれたものだった。とはいえガラタサライの攻撃は褒められたものではなく、前線のドログバやブラク・ユルマズの個々の能力に頼っているものであり、結局は試合終了までそれは改善されなかった。

シャルケは失点後もボールを支配するが、前述のような崩しからは得点することなく前半終了間際にカウンターから同点に追いつく。

ガラタサライのルーズな守備から後半シャルケはアウェーゴールを重ねることも難しくないと感じていた筆者の予想は大きく裏切られた。ピッチコンディションの悪さからスタミナを削られたのか、後半のシャルケの選手たちは運動量が落ち、ミスを重ね決定的なチャンスをまったくと言っていいほど迎えなくなる。それはガラタサライも同様でミス連発で後半はより一層凡戦の色が濃くなりそのまま1-1で終了する。このスコアには両チームともまずまずの満足感が得られるであろう。しか、この対戦がCLの決勝トーナメント一回戦のレベルになかったと言っても言い過ぎではない。それは試合後にドイツの中継で解説を務めていた元ドイツ代表オリヴァー・カーンも語る通りだ。フンテラールの復帰がシャルケの復調にもそのままつながると考えていた筆者は浅はかだったようだ。確かに今日のシャルケの出来は悪くなかったが、これではリーグ戦で順位をどんどん上げていくということは考えづらい。なぜなら最後のラストパスの精度やフィニッシュの確率が悪いからである。またビルドアップでのミスで失点したバックラインに関してはある程度割り切ることが上昇のカギになる。フンテラールという絶対的なターゲットマンが復帰した今、前線に簡単に放りこんでもなんとかなることが考えられる。そこにファルファンやバストスなどのスピードやダイナミズムに富んだ選手が絡んでくれば、今日のような燃料切れもなく攻めることができるのではないだろうか。そして効率よくフィニッシュまでいくことも可能になるだろう。また、このような戦い方を選択することにより、リーグで5番目に多い失点数も改善されるだろう。もともとメンツが揃っているDF陣はしっかり引いて守れば大崩れはしないはずなのである。

問題はこの弱者の戦い方を選択する器量が監督にあるか?またファンが我慢できるか?なのかもしれない。

※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。

筆者名 平松 凌
プロフィール トッテナム、アーセナル、ユヴェントス、バレンシア、名古屋グランパスなど、好みのチームは数あるが、愛するチームはバイエルン。
ツイッター @bayernista25
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