ドルトムントvsバイエルンレビュー&CL決勝プレビュー~

かれこれこのカードについて書くのも筆者自身3回目だ。

前回書いた時には「ドイツ版クラシコ」と銘打って本家クラシコにも劣らない名カードになると締めくくっている。自分で言うのも大変恐縮だが、あの記事を書いてからはや2か月ほどでその言葉は半分確かな説得力を持ったように思える。なぜなら、CLの決勝という世界最高峰の舞台をこの2チームで務めるのだから。しかし強者同士が戦うカードが必ずしも名試合になるとは限らないのがサッカーの常。そんなCL決勝がどんなものとなるのか予想できる便利な試合がある。

それもまたドイツ版クラシコ。ただし舞台が違う。そこはブンデスリーガという国内リーグであり、覇者も決まっている。当然と言うべきか、両者多くの主力選手を温存するということになった。手の内を隠すというよりはまさに温存という意味合いが強いだろう。単純に出すメリットがないのだ。バイエルン指揮官ハインケスでさえも「この試合には何の意味もない」と語る。

「そんなお互い到底100%ではない状態での試合がCL決勝の何の参考になるのか?」

などとは言わせない。

メンバーが変わっただけではチームの本質は変えられない。加えてハインケスもクロップもどの戦い方が最も適切であるかを試す可能性だってなしとも言い切れない。ここで言うチームの本質=戦い方=守備の仕方と考えていただく。両チームの強さの秘密は守備方法である。

最初に断っておくが、「このメンバーだからでしょ」という突っ込みは一切なしにしていただきたい。それを言っては全くナンセンスだ。

この試合でのお互いの戦い方を普段の姿と比較しながら分析しよう。

ホームのドルトムントはいつもとあまり変わらぬ姿を見せたと言えるだろう。高い位置から複数で絡め取ろうとする例のプレスである。もちろん先日のマドリー戦に比べればいくらか情熱は欠けているが。その戦い方はしっかり奏功し、危険なカウンターを幾度も仕掛けることに成功した。おそらくCL決勝も全く同じ戦い方であろう。もともとブンデス下位チーム相手にはよりハイプレスであったが、それではバイエルンには対抗できないと編み出した守備タイプもここまでCLで勝ち進みすっかり板についている。

バイエルンはというと今やアイデンティティとも言えるハイプレスは影を潜めた。それはバルサ戦1st.legに採用していた守備に似ていたという表現がわかりやすいだろうか。結果から言えばこの試合では全くの不発に終わった。もしハインケスがあの時の再現を決勝でも考えているとしたら、今日の試合でその考えは大きく揺らぐはずだ。ハイプレスを控えプレスラインすなわちプレッシャーを高める線引きをドルトムントよりやや後ろにしたものの、そこで相手に収められてしまうシーンがいくつか見られた。だったらハイプレスしても一緒だろとなる。ちなみに失点シーンもハイプレスを仕掛けずロングボールが出され、人数はいたものの後方から出てきたグロスクロイツにつききれず合わされるというものだった。

このような結果から多くのサッカーファンの予想と同様にCL決勝ではこの試合のバイエルンとは全く違う彼らが現れることはほぼ間違いない。

ちなみに両チームの攻撃パターンは普段の彼らと変わらないものであった。

途中やや不親切にハイプレスとひとまとめにしている部分をいくらか付け加えたい。

ドルトムントのハイプレスというと一つのボール(場所)に複数の人間が群がるイメージである。月並みな表現だが、一人一人の力は弱くとも(一人一人の対人戦の強さはそれほどではなくとも…)といったところである。そこからのカウンターは既に専売特許である。

一方バイエルンは対人戦の強さに自信を持つ選手がボランチに2人ずどんといるので、基本的に1対1でのボール奪取を好んでいる。トップがプレッシャーをかけつつパス出しのコースを限定し、後ろが1対1でしっかり勝つといった寸法である。

両者とも「ハイ」プレスには変わりなく、凄まじい運動量を要することは言うまでもない。ここに今のサッカーで勝つためのとても当たり前の真常識ができたと言えよう。

「とにかく走る」

CL決勝ではどっちが多く走っているかなーなんて気にしつつお互いの守備の微妙な違いに着目していただければ、この記事もうかばれます。


筆者名:平松 凌
プロフィール:トッテナム、アーセナル、ユヴェントス、バレンシア、名古屋グランパスなど、好みのチームは数あるが、愛するチームはバイエルン。
ツイッター:@bayernista25

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