「インテルの現在地を確認する、12の質問」 vol.1に引き続き、5月8日に行われたラツィオ戦にて、インテリスタがフロントが投げかけた質問を分析していこう。

Q5:2010年~2013年の間で、世界の頂点から現在の状況に転落した。欧州の他クラブの例を見て、すべて選手たちや監督たちの原因と思うのか?

いとも簡単に選手を放出し、監督を交代させては、混乱を助長する。ミスワークを繰り返していながら、自分たちは一向に責任を取ろうとはしない、フロントに対する痛烈な皮肉である。

言うまでもなく、一番の問題はフロントにある。屋台骨が腐っていれば家は傾き、根が張っていなければ木は倒れるものだ。ただし、それだけに絶対にモラッティが、この問いかけについて言及することはあるまい。自らの瑕疵を公に認めることになるからである。

言い換えれば、転じて、「あなたが何を考えて、クラブ運営をしているかをはっきりさせてくれ」と、その他の疑問に対する回答を欲しているのだとも取れる。

Q6:メディアからの攻撃に対して、なぜクラブはいつも受け身なのか?

12の質問の中でも、最も現地とこちらとの状況・認識の差を感じさせる問いかけである。

下手に言い返しては失言へ繋がり、FIGC(協会)から処分対象とされる愚を犯すよりは、自分たちが抱えている具体的な問題解決に力を入れた方がいいように、筆者には感じられる。が、それはあくまで現地の状況を正しく知らない、遠く離れた日本の地にいるからこその思考なのかもしれない。あるいは現地では、我々では知り得ない、あるいは感じ取れない侮蔑・差別的な報道が、クラブに対して向けられているのかもしれない。

Q7:インテルには常に犯人がいて、他クラブでは見られないニュースの漏えいがある。帰属意識の意味を伝え、クラブの全ての状況を管理し、クラブを守るために表に出られる強い人間が、フロントにいるべきではないか?

関係者全員を際限なく疑心暗鬼に陥らせる、緊急性の高い問題である。 先日もカッサーノとストラマッチョーニの衝突が、練習の翌日には大々的に報道されてしまったように、インテルにはロッカールームの情報を、いともたやすく外へ流してしまう者がいる。選手なのかコーチなのか、それ以外の誰かか。何にせよ、力を持った記者と繋がっている者(イタリアでは特定の記者と親交を育み、情報を売る関係者が珍しくない。記者サイドも、そうして情報を獲得できる者こそが優秀である、と認められてしまう文化があり、スキャンダルの温床となっている)がいることは明白だ。

フロントに求められているのは、文面の通り、具体的な対応策だろう。犯人探しに躍起になる愚行に走れば、魔女狩りに発展して士気に劇的な悪影響を与えかねない以上、そうした解決は得策ではない。むしろこれからインテルの一員となる者に、正しくクラブのために働く意義を伝える者を。メディアの悪質な嫌がらせにも負けず、誇り高く、時にはウィットに富んだ回答で、監督や選手たちをフットボールに集中できるよう、働くことのできる人間が必要だ――そう訴えているわけである。

後述の質問8と、強く関係している問いかけと言える。

Q8:レレ・オリアリがフロントから遠ざけられた真の理由が、一度も説明されないのは何故か?

3冠を獲得した2010年の夏までクラブにおり、ピッチの外からチームを支え続けた男、ガブリオレ・オリアリ。その不可解な退団には、「マルコ・ブランカTD(テクニカル・ディレクター)との対立があったのではないか」という説が非常に根強い。真意はあくまで謎のまま、と前置きさせた上で一応の説明をしておけば、

「モウリーニョ退任後、ブランカをはじめとするクラブ幹部の意向はラファエル・ベニテス(当時リヴァプール)の招聘でほぼ一致、しかしオリアリは反対」

「ベニテスがカルボーニ(バレンシア指揮官時代、教え子であった)の入閣を望んだため、ブランカはこれ幸いと政敵であったオリアリ解雇へと動く」

「現場の意見を重視し、デスクへ苦言を呈すことも少なくなかったオリアリには敵も多く、あえなく政争に敗れ退団」

との噂がある。それだけに、「義の人」というイメージが強くなるのは当然だろう。

gabriele oriali

彼に対する一部インテリスタの信頼には絶大なものがある。現地では2年以上前から、「ただちにオリアリの復帰を」という横断幕が掲げられ、これまでもメディアからは定期的に取り沙汰されてきた。実際、3冠獲得時の主力メンバーや、マンチーニ、モウリーニョといった先のインテル黄金期を築き上げた指揮官との関係性が抜群によく、特にモウリーニョなどは 「オリアリは早く自分の家(インテル)へ戻るべきだ」 と、彼を解雇したインテルフロントの判断に公に苦言を呈している。

この3年間、ブランカがメルカートで成功よりもはるかに多くの失敗を重ね続けてきたこと(特に監督選考眼のなさ)を考えれば、オリアリ待望論が高まるのは、むしろ当然の成り行きだ。実際には例えオリアリが残っていても、チームの崩壊は止められず、凋落は避けられなかったと筆者は考えるが、それでもクラブの誇り、尊厳を守るためには、彼の存在は必要不可欠であったとも思う。

内部の複雑な人間関係が絡んでくる以上、現実的にはオリアリのインテル復帰は難しいだろう。だが、例え実質的な影響力が薄くとも、彼のように「自分のことよりも、インテルそのものを優先して働こうとする」勇気ある者・・・まさしく彼のような人物が、クラブにいること。これをファンが望んでいるのは、疑いようのないところである。

vol.3へ続く・・・


筆者名:白面

プロフィール:だいたいモウリーニョ時代からのインテリスタだが、三冠獲得後の暗黒時代も、それはそれで満喫中だったりします。長友佑都@INTERの同人誌、『長友志』シリーズの作者です。チームの戦術よりも、クラブの戦略を注視。

ブログ:http://moderazione.blog75.fc2.com/

ツイッター:@inter316

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