2013-14シーズンからマンチェスター・ユナイテッドの新監督に就任するデイビッド・モイーズ監督。
ポスト・ファーガソンというに難しいミッションに挑戦する彼が先日、初めて記者会見を開いた。そこでは就任に際した誓いや想い、そして知られざる監督就任までのエピソードが語られ、現地でも注目を集めたという。
今回は、そんなモイーズ監督の10分間にもおよぶインタビューの冒頭を日本語で紹介することにしよう。
記者「モイーズ監督、ユナイテッドの監督として今この席に座られて、 どのような誇りを感じていますか?」
モイーズ監督「ユナイテッドの監督に就任するこんなチャンスを与えられて信じられないほど恵まれていると思うよ。サー・アレックスとクラブの役員たちに感謝したい。それと同時に、私にとってこれはとても奇妙なシチュエーションでもあるんだ。こんなことになるなんて思ってもいなかった。サー・アレックスから電話を受け家に招かれるまで、本当に何も知らなかったからね。
私はてっきり、『君のチーム(エヴァートン)の選手の1人を獲得するつもりだ』とでも言われるのかと思ったよ。私が彼の家にお邪魔すると、彼は開口一番『引退しようとも思っている』と話してくれた。私は『いつですか?』と聞き返したんだ。なぜって、彼が引退するなんて全く思わなかったからね。すると彼は、『来週だよ』と答えてくれた。
そして、次にサー・アレックスの口から出てきたのは、『君がユナイテッドの次の指揮官だよ』という言葉だった。だから、私はイエスもノーも言うことができなかったんだ。自分がユナイテッドの次の指揮官だと指名される、それだけで十分だったんだ。
皆さんのご想像通り、顔から出血しそうだったよ(笑)私はとても驚いたし、何よりショックだったのは、サー・アレックスが引退するという事実だった。しかし、実際はユナイテッドの新監督になるということにゾクゾクしてもいたんだ」
記者「ご自身がサー・アレックスの後任に指名されることを想像したことはありますか?」
モイーズ監督「ここは、監督になりたいと望むすべての人が目指すべき場所だ。サー・アレックスの時代が終わる時、自分も後任を検討できればいいなと思っていた。その方が英国人監督のためにもなるしね。監督の中には、私が指揮していたプレストンのような下部リーグを率いることになる人もいることだろう。しかし、そこでいい仕事をすることができれば、チャンスは掴めるものだよ。そういう意味で言えば、もし私がここで結果を出すことができれば、他の人にもチャンスは訪れるかもしれないね」
記者「史上最大の成功を収めた監督の後を引き継ぐというのは、一体どれほど難しいことなのですか?」
モイーズ監督「サー・アレックスの後任を引き受けようとするすべての人が、彼が何を成し遂げてきたのかを知っているはずさ。彼の栄光は信じられないものだよ。彼の成し遂げたものに勝るものなんてない。私にできることは、"デイビッド・モイーズがこれまでしてきたこと"と同じさ。ユナイテッドの伝統をしっかりと継続させつつ、私色のスタンプ(色)をこのクラブに刻んでいきたい。
イングランドのチャンピオンクラブに就任できて、私はとても幸運だ。そしてそれは、私にとっての監督としての素晴らしい再スタートとなった。世界中の誰にも負けないくらい素晴らしいものだね。サー・ボビー・チャールトンが会いに来てくれた時、そのことに強い興奮を覚えたんだ。彼とはトレーニングセンターで初めて面会したが、私にとってそれは信じがたい経験だったよ」
記者「あなたはユナイテッドと6年間の長期契約を結びました。そのことがあなたにとって、どれほどの自信になりましたか?」
モイーズ監督「私は、このクラブにいる人々がファンタスティックだと悟ったんだ。みんな継続性と活力を求めていて、グレイザーオーナーやウッドワードCEOも長期的なことだと理解していた。エヴァートンのビル・ケンライト会長、そしてエヴァートンというクラブにも大きな感謝をしなければならない。私がユナイテッドの監督に就任せざるをえないことを、会長は理解してくれたものだと私は確信している。グレイザー会長とウッドワードCEOも当然エクセレントだったし、選手たちも同じさ。この役職の重さを、皆さんなら理解できるだろ?(笑)
そして、サー・アレックスの引退をもって退団した3名のコーチ(レネ・ミューレンスティーン、マイク・フィーラン、エリック・スティール)たちにも他大なる感謝をしなければならない。私はレネにクラブに残留してほしいと頼んだ。しかし彼は、自身が退くことこそ最も適切であると感じており、そうすることで、私がチームに対して持つことのできる影響力を高めてくれたんだ」
記者「あなたはサー・アレックスの栄光を再生することができますか?」
モイーズ監督「サー・アレックスはいつも我々とともにいる。オールド・トラッフォードの北スタンドには彼の名前がついているし、彼の銅像だってここにはある。サー・アレックスの時代が終わり、新たな時代がやってくるということをサポーターたちも自覚する必要があるだろう。彼はこのレベルを25年間以上も継続させたんだ。1つのクラブでそんなことができる人なんて、彼以外に誰もいないよ」
また、ウェイン・ルーニーの去就についてモイーズ監督は、「我々は何度も話し合いの機会をもった。私の見た限り、私と彼の間に以前起きたことは、もう気にしていないようだった。私たちは今、一緒のチームで戦っている。彼の目にはきらめきのようなものを感じた。彼はここで満足そうに見えるし、真摯に取り組んでいる」と語り、「私は彼とともに戦いたいし、クラブが声明を発表したように、彼を売ることはないよ」と断言した。