ザッケローニの迷いを生んだもの、そしてギリシャ戦へ

攻撃的なフットボールを好むザッケローニにとって、恐らく香川と本田の共存は大きな夢だ。そうした中で守備をこなさなければならない時間が多くなるコートジボワール相手に、ザッケローニは理想と現実の間で決断を下せなかった。理想を追って攻撃的なメンバーに守備のタスクを課した結果、ドイツで得点を量産した岡崎を自陣で守備に走り回らせ、攻撃の中心として輝かせたい香川を失点の原因としてしまった。 コートジボワールを甘くみた訳ではないだろうが、全力のアフリカ勢相手に挑む上では余りに無謀であったと言わざるを得ない。セットプレーなど、一瞬止まる時間に明らかにミスが多かったコートジボワールの弱点を突き、本田が素晴らしいゴールを決めたものの、自分たちで上手く仕掛けるような攻撃はほとんど出来なかった。大抵の時間が守備に忙殺され、ボールを入れようにも中央で厳しくマークを受ける香川や本田の足元。彼らにいい形でボールを持たせるような余裕はチームにはなかった。

守備面では、選手達がプレスにおける絵を共有出来ていなかったことが最大の問題だろう。個々の意識が共有出来ていないことは、コミュニケーション不足であり、戦術的な理解の浅さでもあるはずだ。交代で入った遠藤と大久保も、イマイチ明確なメッセージを示すことは出来なかった。自分たちの都合の良いように考えて「自分たちのサッカー」を狙うだけでは、このレベルでは戦えないのだ。ギリシャ戦では「自分たちのサッカー」を生かす方法を考えるというアプローチに期待したい。

勿論可能性は低いし、そんなことはないと信じたいが、一部に噂されるように選手との不和という可能性もあり得ない訳ではない。もし選手との関係が悪かったのであればこの試合は、自分の現実的な戦術の正しさをチームに見せつけるものであったということにもなる。何にしても、ギリシャ戦はコートジボワール戦よりもボールを持つ時間が増えることが予測される。そこで、攻撃的なシステムを選択してくるのか、より現実的なシステムで手堅く勝利を狙いに来るのか。そこでアルベルト・ザッケローニという指揮官の考えていることがある程度明らかになるのではないだろうか。曲者、ギリシャを相手に可能性を残し、日本の期待に応えてほしい。


筆者名:結城 康平

プロフィール:「フットボールの試合を色んな角度から切り取って、様々な形にして組み合わせながら1つの作品にしていくことを目指す。形にこだわらず、わかりやすく、最後まで読んでもらえるような、見てない試合を是非再放送で見たいって思っていただけるような文章が書けるように日々研鑽中」
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