ウエストハム・ユナイテッド(昨季13位)【開幕戦観戦】
【両サイドからの広い攻撃のクオリティに期待。】
・Positive Aspect
選手個々の動きは良く、コンディション調整は上々。新加入のクヤテやクレスウェルも、それぞれMVP級のパフォーマンスを披露した。この2人は、チームを強化する上で正しい補強になりそうだ。ニュージーランドでのキャンプによる組織力の底上げにも成功した印象を受ける。組織的にも大きな穴は無く、実際PKが決まっていればトッテナムを破っていた可能性も高い。新加入のクレスウェルとダウニングが両サイドで躍動し、攻撃の幅も大きく増えた。特にダウニングからクレスウェルへのサイドチェンジで幅を広げるようなプレーは、非常に面白い。ここにマット・ジャービスのような選手が加わってくれば、両サイドから積極的に切り崩す展開で仕掛けていくことが出来るだろう。
・Negative Aspect
大黒柱キャロルの穴を埋めるFW、前線の柱は見つかっていない。カールトン・コールも悪くはなかったが、彼も全盛期ほどの存在感を示せてはいなかった。長い時間のプレーではクオリティも落ちていたし、やはりカールトン・コールをベンチに置ける展開が理想的なのだろう。トッテナムが10人になった際にFWを増やして勝負を決めてしまう、という選択がそういった台所事情から出来なかったのは苦しい。また、10人になった相手に逆転されてしまったように、状況に対応する組織としての上手さを見せることは出来なかった。台所事情が悪い状態で、選手が自ら考えなければならない時間が増えてきてしまうと、窮地に追い込まれる可能性も。
・New Player
アーロン・クレスウェル
「ベインズ2世」の名に恥じない傑出したパフォーマンスを見せたサイドバック。センタリングの精度だけでなく、組み立ての上手さでウエストハムのサイド攻撃に新たな奥行きを加えた。絶妙なポジション取りでダウニングからのサイドチェンジを受ける場面も散見されたように、既にウエストハムの組織に問題なく馴染んでいる。開幕戦はFW的なヴァズ・テと組んでいたが、そこに球離れの良いテクニックがある選手が入れば、より魅力的な攻撃を展開してくれるはずだ。勿論、左足からのクロスボール精度にも期待。
・Key Player
スチュワート・ダウニング
若手筆頭のウインガーだった頃に勝るとも劣らない輝きを放つウエストハムの星は、経験と独特のリズム感を融合させたプレーで第2の全盛期を謳歌している。相手のDFに届かない位置にボールを置きながらの逆足のセンタリングに加え、逆サイドへのサイドチェンジも完備。内側に切れ込むプレーや周りを生かすプレーもそつなくこなすように、縦にスピードを生かして飛び込むだけのウイングではなくなった。狭い位置でもブロックを掻い潜るようなセンタリングを使って、サイドで2人のDFを引き付けるプレーをこなしていた。
・Potential Player
モハメド・ディアメ
恩師ロベルト・マルティネスを追ってエヴァートンに加入する話もあるが、FWのサポートを現有メンバーで一番こなせる選手。そのフィジカルでロングボールの的になるだけではなく、推進力を生かして一気にボールを持ち運ぶ。フィジカルの強さを生かして守備のタスクもこなせることから、やはりチームには残しておきたいところだ。残念なことに、ハル・シティへの加入が決定。
エネル・バレンシア
身体能力とポテンシャルは無限大だが、未だ指揮官の信頼を完璧に得ていない雰囲気もあるエクアドル代表FW。サイドでの経験が長いことから、中央でのスペース把握をそこまで得意としていない点が大きな弱点。身体能力に頼るが、幅が少ないと言う面ではサンダーランドのアメリカ代表FWアルティドールに共通する部分も大きく、彼のようにフィットに時間がかかってしまう可能性も。それでも、キャロル復帰までは彼の力が必要な場面は間違いなく多いはず。彼が嵌れば、上昇気流に乗ることになりそう。
アレクサンドル・ソング
バルセロナからの新加入が決まった守備的MFは、ワンボランチとして攻守を一手に任せることも出来る特異な人材。2ボランチよりも1ボランチで能力を発揮する印象が強いだけに、どのように彼を使いこなしていくかは注目。フィジカル面でも十分に中盤を支えることになるはず。
・Deadline Deal
モルガン・アマルフィターノ
フランスの天才テクニシャン。懐の深いキープでサイドバックを押し上げ、ワンツーなどの連携でサイドを突破していくような頭脳的なプレーを得意としている。ウエストハムでは新加入のクレスウェルを生かしていくことが求められるだろうか。力と力がぶつかり合うプレミアでは特異な存在だけに、大当たりすれば面白い。
筆者名:結城 康平
プロフィール:「フットボールの試合を色んな角度から切り取って、様々な形にして組み合わせながら1つの作品にしていくことを目指す。形にこだわらず、わかりやすく、最後まで読んでもらえるような、見てない試合を是非再放送で見たいって思っていただけるような文章が書けるように日々研鑽中」
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