スチュアート・ゲリングの影響
アギーレの代表で右腕となるイングランド人コーチ、スチュワート・ゲリング。
アギーレによれば、特に攻撃の構築を得意とするこの男に関する情報は、英語で探しても決して多くない。リバプールでの現役を経て、コーチとしてリバプールのアカデミーで若い年代を指導。スペインなどでもコーチとしての経験を積んでいたようだが、具体的な情報は非常に少ない。
そんな中、筆者はある面白いウェブサイトに辿り着いた。それが、非常に興味深いことに「日本代表の2点目」と多くの共通点を示したのである。
そのウェブサイトには、「エリート指導者スチュワート・ゲリングが教える、プレミアリーグの戦術」というPDFファイルがあった。イングランドのアマチュアチーム向けに、彼が戦術練習をいくつか紹介するという企画だったようだが、その中でも特に興味深かったのが「攻撃戦術」の部分だ。その練習自体はサイドバックからのセンタリングに複数の選手が走り込むというものだったが、彼の提示した幾つかの重要な「ポイント」が柴崎のゴールにおける流れと一致する。では、そのポイントを列挙していこう。
・センターハーフは、ペナルティエリアに走り込む。しかし、重要なのは急ぎ過ぎないこと。到着するのが速すぎてはならない。
・走り込む選手たちは、全員がペナルティマーク辺りに集まり過ぎないように心掛け、基本的にはどちらかのポストを目指して走り込む意識を持つ。また、状況によっては深めで待っても良い。
・ボールを待たず、スピードに乗った状態でエリア内に侵入することを心掛ける。
・走る角度について注意すること。突如方向を変えるような意識を持つことで、DFは対応することが難しくなる。
・練習はトップスピードで行うこと。トップスピードでエリアに侵入することによって、より危険な攻撃が可能になる。
このアドバイスを動画と照らし合わせてみると、思った以上に2点目は彼のアドバイスしている練習と共通点が多い。センターハーフの柴崎は遅れながらエリア内に侵入。また、受け手となる武藤と本田は両ポストを狙うようにトップスピードでエリア内に侵入している。イングランド人コーチらしく、サイドからの攻撃やカウンターに関しては拘りを持っていることが伺えるだろう。サイドからの攻撃のパターン化が可能になれば、日本が世界に誇る両サイドバックの豊富な人材をチームとして今まで以上に戦術的に生かしていける可能性も高い。
就任2試合目にして、アギーレとゲリングは既に日本代表に変化をもたらし始めた。勿論日本の選手達が良く指揮官の指示を吸収出来ているということもあるのだろうが、面白い変化が見られつつあるのは確かだ。成功か失敗か、この段階で論じるのは不可能だ。しかし、「日本サッカーが軽視してきた部分を気づかせてくれている」という面では2人の指導者は大きな仕事をこなしてくれるのかもしれない。順風満帆とはいかないかもしれないが、タブーに踏み込むアギーレとゲリングの挑戦に期待したい。
筆者名:結城 康平
プロフィール:「フットボールの試合を色んな角度から切り取って、様々な形にして組み合わせながら1つの作品にしていくことを目指す。形にこだわらず、わかりやすく、最後まで読んでもらえるような、見てない試合を是非再放送で見たいって思っていただけるような文章が書けるように日々研鑽中」
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