「コミュニケーションを基盤としたアプローチ」の必要性
守備のポジショニング、という議論はどうしても「1人1人の選手の戦術的理解力が欠けている」という観点から語られやすい。しかし、こういった1つ1つのミスは「実は明確なコミュニケーションの不足」によって生み出されているのではないだろうか。吉田麻也がIndependent紙のインタビューで、CBとして「英語を喋ることが重要」という意のコメントをしているが、日本では軽視されやすい部分だ。
実際、多くの日本人フットボーラーが言葉を学ぶ事を軽視し、海外のリーグへと渡っている。勿論、コミュニケーションの壁を埋めるだけの能力がある選手もいるだろうし、吉田選手が触れているようにポジションによる差もある。ただ、「現地の言語を話すこと」を重要視しない傾向は「守備でのコミュニケーション」を重要視していないという日本フットボールの問題を端的に表しているのではないだろうか。
フランクフルトで活躍する乾は、監督に「長谷部の存在は心強いだろうが、もう少し早くドイツ語を覚えてくれてもいいと思う」とコメントされたこともある。UEFAの練習メニューのように、前線の彼を「前からの守備において最も重要になる存在」と理解した場合、アタッカーであっても言語能力は必要不可欠だ。Communication-based approachには、そういった意識改革を促す効果もあるかもしれない。
Communication-based approachにおいて、重要になるのは守備練習において常に選手達がポジションを理解し、コミュニケーションを取り続けるようにコーチが指示を出すことだ。
2つの例から見えてくる特に重要な点は、「人数を減らすことによって、コーチが把握しやすい状況を作ること」、「全ての選手がコミュニケーションに参加する意識を持たせるようにすること」という2点だろう。そして、前線の選手のポジショニングにおける重要性、という部分も理解されるべき点である。
日本代表の選手達は献身的に守備に参加する選手が多く、「量」の面では問題がない。ただ、一方で「質」の部分には疑問が残る。守備の練習において、この2つを念頭において指導を行っていくことは、試合の中で、チーム全体の適応力を高めることにも繋がる。
「ゾーンディフェンス」について、個々の戦術眼と正しいポジショニングセンスを磨くということは当然必要になってくる部分だ。しかし、そこだけに集中することで日本の守備における問題が解決するとも思えない。「守備におけるコミュニケーション」に対する注目がより高まり、議論が盛り上がるようになってくれれば、筆者にとってこれ以上の幸せはない。
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