また、ヨーロッパの例に学ばなくても国内ではチーム同士が提携関係を結んでいることは問題がない。
例えば、奈良クラブは川崎フロンターレと「アドバイザリークラブ」契約を結び、クラブスタッフ研修などアドバイスを送った。彼らにはこうしたやり方もあったのかもしれない。
さて、問題はザスパクサツとtonan前橋の関係である。問題点は2つだ。
1つはJリーグの規則では以下のような規則がある。
Jリーグ規約
第3章Jクラブ第26条の(1)-①
Jクラブの役員または職員は、以下の事を禁止されています。
他のJクラブまたは当該他のJクラブの重大な影響下にあると判断される法人の役員 または職員を兼務すること。
JFL以下はJクラブではないからtonan前橋とザスパクサツの兼務はOKということなのだろう。
また、ザスパクサツの代表取締役社長都丸晃は2015年のサポーターズカンファレンスで以下のように語った
Q:tonan クラブとの関係について
A:新体制発足から一環して話していることですが、トップからアカデミーまで、指導者や選手の交流をしたいと思っていますし、現在は指導者の交流をしています。
確かに現ザスパクサツGM補佐の氏家英行氏はtonan前橋でコーチ、監督代行を行っている。
また、ザスパクサツは森下仁志監督以下コーチ陣も一新しているが、「やりやすい指導者を置くこと」はペルージャのケースでも見られた。それまでセリエAで経験のなかったセルセ・コスミ、ステファーノ・コラントゥオーノといった監督が就任し、そこで結果を残し名声を手にしていった。
そう、すべてはうまくいっていれば問題ないわけである。菅原GM体制になったのは2014年だが、これまでこの問題が大きく取沙汰されることはなかった。
むしろ、江坂任(現・大宮)、瀬川祐輔(現・大宮)と大学サッカーから選手を獲得し育成して売却するという方向性ではうまくいっていた。
それについては「かつては大学サッカーから新人選手を獲得することは大変だったが、獲得した選手が出場機会を得て成長している姿から魅力を感じてもらえるようになっている」というような話をサポーターズカンファレンスで行っている。
今季J2でダントツの最下位で調子が悪い、しかも起用されるのは実績がない若手選手ばかりという状況だからこそこういう問題になっているのだ。
ちなみに、全て失敗というわけではなく今年も2016年関東大学サッカーリーグ得点王だった高井和馬を日本体育大学より獲得し、高井はこれまで26試合8ゴールをあげている。個人に目を向ければそうした活躍する選手もいる。
実際、2014年以降財政は健全化したものの逆に言えば選手獲得に力を割けなくなっておりチーム順位は芳しくない。18位、18位、17位、そして今季は22位(8月18日現在)とJ3降格まったなしの状況である。
また、tonan前橋も7位、8位、9位と順位を落とし関東2部へ降格、今季は関東2部で10チーム中8位と低迷している。
財政を健全化させつつ少ない予算で大学サッカーなどからよい若手選手を獲得しチームもJ1へとステップアップさせていく、ザスパクサツ群馬が掲げる理想はなかなかに難しい。