“蹴球都市”藤枝のサッカー熱と超攻撃的スタイル

藤枝MYFCがホームタウンとする静岡県藤枝市は、サッカー熱が非常に高い地域だ。藤枝市の公式サイトには「サッカーのまちPRサイト」という特設ページが存在しており、「藤枝の歴史は、サッカーの歴史だ」というキャッチコピーが掲げられている。

また、市内には中山雅史、山田暢久、長谷部誠、山田大記ら名選手を輩出した名門・藤枝東高校があるが、特に有名なのが藤枝市出身のスーパースター・名波浩(現・日本代表コーチ/以下名波氏)にまつわるエピソードだろう。

名波氏は2001年11月に刊行された著書『NANAMI 終わりなき旅』(幻冬舎)の中で、「生まれ育ったのは藤枝という町で、サッカーの町として名が通っている。当時も今もそうなのだが、一般的な図式としてはサッカー=静岡=清水というものがある。藤枝は常に清水に対抗する立場でライバル関係にある。(中略)静岡、その中でもやはり清水、藤枝という町はサッカーに関しては異常だというのをよく耳にする」(p.37)と藤枝のサッカー熱について触れている。そして、非常に興味深いのが、高校進学時の裏話だ。

「(前略)結果的に清水市立商業高校に入ることになったのだが、決定するまでには紆余曲折があった。僕は静岡学園や東海大一高の誘いを断り、地元の藤枝の高校に入るつもりでいた。(中略)ところが、実際にまわりの人間に聞いてみると、中学の時に県選抜だった選手はみな清商に行くらしい。サッカープレイヤーとして考えた時、相当悩んでしまった。そんな時、清商のサッカー部の監督から誘いを受けた。大瀧監督だ。(中略)藤枝市と清水市はライバル関係にあったため、周囲からの猛反発があった。これまでの恩、義理を捨てて行くのかとまで言われた。裏切り行為という人もいた」(p.58~59)

後に名波氏本人がサイソンKAZUYA氏のYouTubeチャンネルに出演した際に、この件の詳細を語っており、清商の試験当日に「名波を電車に乗せるな」という伝説のフレーズが生まれたほどだという(上記動画3分30秒から)。

このように、藤枝市と清水市のライバル関係は凄まじいものがあるが、今季はJ2の舞台でクラブ同士の熱い対決が繰り広げられた。そう、藤枝MYFC vs 清水エスパルスである。

第15節の第1ラウンドは、清水が5-0と藤枝を圧倒。だが、サポーターが「蹴球都市の誇り」という横断幕を掲げる藤枝もこのままでは終われない。第37節の第2ラウンドでは、J1昇格争いを展開する清水に2-0と会心の勝利。見事リベンジに成功した。(※ハイライトは下記動画1分28秒から)