ここまで述べてきた通り、藤枝は町全体のサッカー熱が非常に高い。その分、クラブを率いる監督にも独特のプレッシャーがあるはずだが、就任3年目となる須藤大輔監督の姿勢は一貫している。

指揮官が“超攻撃的エンターテイメントサッカー”と表現するスタイルについて、次のセクションで詳しく述べていきたい。

須藤監督の“超攻撃的スタイル”と守備の試行錯誤

2010年に当時東海1部リーグに所属していた藤枝MYFCで現役を引退し、2021年7月からトップチームの指揮を執る須藤大輔監督は、“超”がつく攻撃的スタイルを標榜する。

攻撃面では、3バック+ゴールキーパー(以下GK)を中心とした丁寧なビルドアップから崩す形を志向する。特にGKの位置取りは高く、時にリベロの川島將と同じ高さまでポジションを上げて、ビルドアップに参加。GKが事実上のフィールドプレーヤーとして振る舞う。

攻撃に幅と厚みをもたらす両ウィングバック(以下WB)がカギを握るのも大きな特徴だ。WBはタッチライン付近にポジションを取り、攻撃の選択肢を増やすべく“幅”を取る。

また、片方のWBがボールを持った際は、逆サイドのWBがペナルティーエリア内へ侵入し、フィニッシュに絡んでいく。加えて、左WBの榎本によるカットインからのシュートも効果的である。

このように“実質5トップ”で崩す藤枝において、WBが担う役割は大きい。事実、右WBで攻撃のキーマンとなっていた久保藤次郎は、その働きぶりが評価されて今年7月に名古屋グランパスへ完全移籍。中学時代を過ごした“古巣”へと活躍の場を移している。

須藤監督が理想とするのは、“超攻撃的エンターテイメントサッカー”と表現するスタイルだ。これは、自分たちが攻め続けて試合の主導権を握り続ける究極の形と言えよう。

だが、攻撃に振り切った代償と言うべきか、守備では脆さを見せる。今季の72失点はリーグワースト。4失点または5失点で敗れたゲームが計7試合あった通り、失点が続くと止まらないのが課題だ。