課題の克服に関しては、第34節・ロアッソ熊本戦で須藤監督が動いた。守備時は<5-4-1>のコンパクトブロックをミドルサードに構築し、攻撃では代名詞のビルドアップを封印。ロングボールを軸とした戦い方にシフトチェンジしたのだ。

狙い通りの戦い方がハマり連敗を4で止めると、ここから守備的アプローチが機能する。第35~37節はFC町田ゼルビア、東京ヴェルディ、清水エスパルスと上位陣との連戦となったが、1勝2分(3試合で失点2)と無敗で乗り切った。

守備に手ごたえを感じた指揮官は、第38節のV・ファーレン長崎戦でビルドアップを大々的に復活させ、ロングボールも織り交ぜる形を採用。だが、5失点の大敗を喫したことにより、攻撃と守備のバランスをどう取るかという試行錯誤が続くことになる。

ラスト5試合でもっとも理想的だったのが、順延分の第32節・ザスパクサツ群馬戦だ。攻撃ではビルドアップを軸に、リスク回避のロングボールを引き続き織り交ぜ、守備では指揮官の言う「ミドルブロック」とハイプレスを戦況に応じて巧みに使い分ける。5-1と結果も両立し、来シーズンの指針となる試合だった。

攻撃と守備の折り合いがつけば、来季は“台風の目”に!

冒頭で触れた通り、J2昇格1年目を12位で終えた藤枝MYFC。

須藤大輔監督が掲げる“超攻撃的エンターテイメントサッカー”を理想としながらも、課題の守備を克服するアプローチで攻撃と守備の折り合いをつける――。目標とするJ1昇格プレーオフ進出には手が届かなかったが、実りある1年だったと言えるだろう。

来季に向けて気になるのは、今オフの引き抜きだ。今季途中に絶対的エース・渡邉りょうがセレッソ大阪へ、攻撃のキーマン・久保藤次郎が名古屋グランパスへ移籍。

彼らに続き、パス&ドリブルで違いを作る10番・横山暁之、左サイドでキレのある動きを見せる榎本啓吾が引き抜かれても不思議はない。

今オフ以降も主力選手の引き抜きがあるかもしれないが、“超攻撃的スタイル”を前面に押し出すクラブの戦略は、スカウティングで有利に働くはずだ。仮に主力が移籍しても、目指すスタイルが明確なため、獲得する選手の具体的なイメージを描きやすいからだ。

また、“超攻撃的スタイル”はフットボーラーの本能をくすぐる効果もある。パスをつないで崩すスタイルはやはり楽しいもので、幼少期から“無双”してきてプロ入りした選手たちにとって、魅力的に映るだろう。

事実、クラブ公式サイトのプロフィール欄で「藤枝MYFCへの加入を決めたきっかけ」という質問に対し、多くの選手が魅力を口にしている。

「須藤さんのサッカーに魅力を感じて」(水野泰輔)
「オファーをいただけて、攻撃的で魅力的なサッカーをするから」(西矢健人)
「魅力的な攻撃サッカー」(浅倉廉)
「超攻撃的サッカーに惹かれた」(矢村健)