1.故郷のクラブやデビューしたクラブへ帰るパターン

1つ目は生まれ故郷や出身地のクラブでキャリアの最後を終えたい、故郷のクラブで上に行きたい、盛り上げたいというパターンだ。

カテゴリこそ異なるが、清武弘嗣のパターンがそれだ。大分県出身の清武は、2025シーズンからユースからデビュー時に在籍したクラブである大分トリニータへ移籍している。

同じく、愛媛出身の有馬潤は高知大学卒業後にJFLソニー仙台へ加入。2018年にふるさとのクラブで意識していたというFC今治へ加入した。

一見、同じカテゴリに見えるがFC今治はJFL昇格組、ソニー仙台は母体がソニーという大企業でもあり、周りからは「「安定した立場を捨てて今治に行くの?」「もしそこでJ3に上がれなかったらどうするの?」と周りの人からは言われたこともあります」とFC今治のnoteにて述べている。

故郷ではないが、デビュー時のクラブに帰るパターンも同じと言えるだろう。

2.家族や住環境の問題

2パターン目が家族の問題だ。

子供がいまの学校から離れたくない、家を買っていて単身赴任になるなど家族の住環境を考えると、元所属チームから近いチームを選びたいと思うのは当然だ。

家と言えば、岡山一成が有名だ。

2006年に川崎フロンターレからJ2柏レイソルに期限付き移籍をすると、岡山劇場と讃えられるほどの大活躍を見せた。すると、サポーターのゲートフラッグがきっかけで「岡山。柏に家買っちゃえ!」とコールされるようになった。

大久保嘉人が2021シーズンにセレッソ大阪へ移籍した際は、子供を連れての単身赴任が話題になった。この大久保のパターンはJ1への移籍だが、1のデビュークラブへ帰る、2の住環境をうまく整理した例と言えるだろう。

3.年俸が良い

Jリーグは世界的にも珍しくJ2やJ3でも財政的な規模がJ1を上回るチームが存在している。

2023シーズンのJリーグ資料によると、J1の売り上げ最下位のサガン鳥栖は売り上げ24億9700万円、湘南ベルマーレが28億1200万円だが、J2清水は50億円超え、磐田も約42億円と上回っている。同じようにJ2最下位の群馬が約8億円に対してJ3松本は約14億5000円とやはり上回っている。

2024シーズンに話題となった、J3・大宮アルディージャのレッドブル入りをはじめ、下位クラブでも財政的にはポテンシャルの良いクラブがある。これは地域リーグでも同じで、アマチュアの地域リーグでも、プロ契約をしある程度の年俸が保証されるパターンだ。

反面、J2、J3でも赤字経営や売り上げが少なく財政に苦しいチームは、年俸が低いことが多い。

ちなみに、Jリーグでは、プロ契約の規定を満たした上であればアマチュア契約の選手も許されている。かつては、鈴木隆行が2011シーズンに水戸ホーリーホックと無報酬でのアマチュア契約が話題を呼んだこともある。(2013シーズンにA契約へ変更)

4.上を狙えるクラブビジョンがある

最後が、上を狙えるクラブビジョンがあることだ。

現在の地域リーグやJFLには野心や壮大なクラブビジョンをもったクラブが多数存在する。彼らは、お互いに激しく戦いJリーグ入りを競っている。

東京都だけを見ても、先ほどの南葛SCをはじめ、SHIBUYA CITY FC、クリアソン新宿、本田圭佑が発起人のEDO ALL UNITEDなど面白いクラブがある。

FC今治や栃木シティなどJ加入を果たしたクラブもある。クラブビジョンに惹かれ、自分の手で昇格を勝ち取りたい気持ちになる選手たちは少なくない。

5.期限付き移籍先のクラブに完全移籍をする

若手で出番を得られずに契約終了になったケースで多いのが、期限付き移籍でお世話になったクラブへ期限付きをするパターンだ。

とりわけ、高卒で加入し3年程度在籍したが、元クラブでは出番がなく、期限付き移籍先のクラブで成長し、Jへ復帰しようと考えることは珍しいことではない。

また、似た理由として慕う監督が、地域リーグに加入し、その縁で誘われるケースもある。