【ユナイテッドらしさとは。】
ギグスらしくあることがユナイテッドらしさへ取り戻す第一歩だといっても大きな意味で差支えはないだろう。もちろんそれではサー・アレックスが指揮を執っていた頃となにも変わりは無いわけではあるが、現状致し方ない。
創造的破壊は難しいということがモイーズによって分かってしまった。それもそうだ、昨期のチャンピオンがなぜスタイルを変える必要がある?と言われればその通りなのだ。長期的に見れば上手くいっている時にこそ変革しなければならない、ということは多々ある。ただ現場はそうは思わないことの方が多い。様々な報道がある中で考えることは、サー・アレックスが「勝ち逃げ」してしまったことが失敗の大きな原因と見ていいだろう。バルセロナに二度の敗戦を機にスタイルの限界がある程度見えたが、国内タイトルを逃し続けたわけではなく、「有終の美を飾って」退任してしまった。内容はともかく結果はきっちり出ていたスタイルに戻れば、とりあえずは間違いない。
この試合はつまりそういうことだった。先制点こそPKだったものの、勢い良く攻める姿は一年前やそれ以前に近いものがあった。「これまで通り」で何が悪い。狭いスペースでの丁寧なパス交換よりもゴールへ向かう意思が、勢いが重要だ。エヴァートン戦もこの試合も観ていた方は、この違いに驚いたのではないだろうか。シュートへの意識、ゴールへ向かう意識、あまりに違っていた。ペナルティボックスへと侵入する人数は相手が守る数に近く、ベクトルはあらゆる方向から相手ゴールマウスへと向けられていた。ああ、懐かしい。
【フットボールは単純だ。】
誰かが似たようなことを言っていた気がするが思い出せないのでとりあえず進めていこう。フットボールは単純であるが故に世界中で愛されるスポーツとなっている。難しくしているのはプレーする側なのだ。
守るときはコンパクトでいい。ただ、攻める時に無理にコンパクトにする必要はない。広大なスペースを切り裂き畳み掛けるのもフットボールだ。狭いスペースにて緻密に計算されたプレーもまた美しいが、100m×64m以上に企画された広大なピッチの上でダイナミックなプレーを見ることがそれに劣るとは思わない。
結局ギグスは答えを知っていた。何度も言うが「らしくあること」が現状における最適解だということを。ノリッジがあまり良くなかったことを差し引いてもギグスがこの答えを導き表したことには賞賛以外の言葉はいらない。まだ1試合しか指揮を執っておらず、残り3試合でどうなるかは分からないが、この日のパフォーマンスと結果はそう言わせるだけの価値はあった。それもそうだ、ファーガソンが現場から去った今、ギグスが最もユナイテッドを知る人物なのだから。ファーガソン就任が1986年、ギグスがユナイテッドへ入団したのが1987年、ある意味で必然の結果なのだろう。
綿密に計算されるのは守備だけでいい。やはりハラハラ・ドキドキ・ワクワク、こうでなくては。もちろん時折ガックリするような失点やミスがあるのは仕方がない。バルセロナのような芸術的なポゼッションも素晴らしいが、ユナイテッドには今のところやはり向かないようだ。ファン・ハール?ああ、頭が痛い。
筆者名:db7
プロフィール:親をも唖然とさせるManchester United狂いで川崎フロンターレも応援中。
ツイッター:@db7crsh01
【Qolyインタビュー】パリ五輪出場の東京ヴェルディMF山田楓喜、トッテナムのクルゼフスキを「自分の究極系」と語るワケ