【新生ブラジルの目指すサッカーは?】

ドゥンガ監督が率いた2010年の南アフリカW杯のセレソンと同様、質実剛健で、堅い守備からのショートカウンターを狙っていた。実際、高い位置からFWがパスコースを制限しながら詰め寄り、中盤でボールを奪って効率的にゴールを陥れようという思惑が見て取れた。

タルデッリが裏を狙い、アルゼンチンがそれに対応してディフェンスラインを下げれば、その前の空いたスペースをウィリアンやネイマールがドリブルで持ち上がる。速攻が難しい場合や、試合の流れによってはポゼッションに切り替える柔軟な対応も見せていた。 

【現在の完成度は?】

立ち上がりは、どこでボールを奪おうとしているか、その意図は読めるものの、FWと中盤の連係がいまひとつで、むしろFWと中盤の間にスペースを与えてしまい、アルゼンチンの高速アタッカー陣に簡単に前を向かせて危険な場面を招いてしまった。

試合が進むにつれて徐々にFWの守備が修正され、勝手にプレスに行ってしまう状態から少し後ろにウエイトし、チームの連係も向上。試合運びも良くなった。前半20分あたりまでは36%だったボール支配率が、最終的に61パーセントまで上がった事実は、効率的にボールを奪えるようになったこと、展開に応じて柔軟にポゼッションへの切り替えができていたことを裏付ける。

ただ、ワールドカップ後のこのタイミングでは世界中のチームがそうであるように、ブラジルもまだまだ発展途上中と言えるだろう。

【良かった新戦力は?】

まずは、なんと言っても全2得点を挙げたタルデッリだ。ゴールというもっとも重要な結果を出したことはもちろん、裏を狙って相手のディフェンスラインを下げたり、中盤まで下りてきて組み立てに参加したりと、内容も良かった。

ジエゴ・コスタを奪われてから人材難が深刻だっただけに、タルデッリの活躍は朗報だろう。「W杯での唯一の仕事は開幕戦で誤審を誘ったことだけ」などと揶揄され、大バッシングを浴びたフレッジとは、それこそ雲泥の差だ。

左SBのフィリペも好印象を残した。リオネル・メッシやアンヘル・ディ・マリア、セルヒオ・アグエロとったアルゼンチンの世界的アタッカーに対して一歩も引かず、攻撃にも積極的に参加。惜しいシュートも放ってみせた。

身体能力の高さを見せたGKジェフェルソンは、メッシのPKを止めるというこの試合のターニングポイントとなった大仕事をやってのけた。緊張のせいかもしれないが、何度かあったキャッチミスをなくせば、守護神を任せられるだろう。

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