-ラヌースに強い思い入れがあるのですね。でもいくらラヌースが好きだからと言って、日本人がアルゼンチン1部のチームでファンではなくコーチを務めるというのは、かなり難しいと思います。どの様な経緯だったのでしょう?
飯沼氏:『アルゼンチンに来てからラヌースで指導者になるまで約1年半掛かりました。実は2013年の丸々1年間は本当にただ通ってただけでした(笑)
話が進んだのは今年からです。キッカケはラヌースのユースでプレーしていた友人にラヌース内部の人間を紹介して貰って、そこからは通い続ける中で選手やスタッフに顔を覚えて貰いましたし、知人も増えました。一番大きかったのはウーゴさんという名物サポーターの存在でしょう。ウーゴさんはクラブからも他のファンより少し特別扱いを受けていて、ウーゴさんに聞けばクラブのことはほぼわかりました。選手の特徴、スタッフの役職、彼のお陰で非公開練習も見ることが出来ました。
「ラヌースでコーチがしたい」と相談した時も彼に育成の代表の名前を教えてもらいましたし、話に行く前にSocio(会員)になった方が印象が良くなるんじゃないか?とのアドバイスをもらったりしました。
そんな日々を過ごしていると、今年になってラヌースがスルガ銀行カップのため、日本で柏レイソルと対戦する事が決まりました。TOPチームの指導者達から日本の情報、柏レイソルの情報を聞かれる様になり、一時的にですがスカウティングとしてデータを集めました。対戦が終わった後も以前と同じ様に通い続けていると、ある時育成部門の方でプレゼンをするチャンスを与えられ、今、ラヌースの7歳〜8歳の指導者となる事が出来ました。』
-凄いですね。プレゼンとは具体的にどんな事をしたのですか?
飯沼氏:『かなり緻密に作戦を練り「なにを、いつ、どこで、どのように」話すか?などは考えていました。例を挙げると、履歴書にラヌースが好きな理由や自分がどんな人間なのか知ってもらえる項目を増やし、何度も作り直しました。
また、予めSocioになっていた事が意外に影響があって、本当にラヌースが好きなんだという証明になりました。育成部長は「お前、ラヌースのSocioなのか?面白い奴だな!なんでボカやリーベルじゃないんだ?」と笑っていました(笑)
また、プレゼンの日はトップチームが試合に勝った週の雨の日を狙っていきました。勝ったあとの方が気分も良いだろうし、雨で練習がない日の方がゆっくり話を聞いてもらえると思ったからです。どこまで影響があったかはわかりませんが、こんな努力はしたつもりです。
ラヌースで何がしたいの?と聞かれた時も、「サッカーを学びたい」だとまたいつも通りお客さんとしてフェンスの外でも良いじゃないかという事になりそうだったので、「俺にはこんな事が出来る!指導がしたい!」というのを強くアピールしました。』