2、ジョゼ・モウリーニョの慢心と、フロントの失敗。
アーセン・ヴェンゲルを何度となく「口撃」していることで知られるジョゼ・モウリーニョだが、彼も既に52歳。年齢を重ねるにつれて、やはりヴェンゲルと同じく、チームへの愛情は強くなっているように見える。
自分が共に全てを勝ち取ってきたチェルシーというチーム、そして何度となく自分を救ってくれたベテランに対する信頼。それは時として、チームを客観的に分析することを妨げることもある。
ジョン・テリーやブラニスラフ・イバノビッチといった選手達に対する強い信頼が、彼らの緩やかな衰えを見逃す原因になったのかもしれない。イバノビッチはスピードへの対応で何度となく弱さを見せ、ジョン・テリーも昨シーズンの様な圧倒的なパフォーマンスは出来ていない状態。
モウリーニョが最も信頼を置く選手達の不調は、致命的な痛手としてチームに圧し掛かった。
同時にセスク・ファブレガス、ジエゴ・コスタといった主軸への依存もチームを狂わせる原因になった。昨シーズンは攻撃を牽引していたジエゴ・コスタのパフォーマンスは低空飛行で、苛立ちもあってラフプレーばかりが目立つ始末。相手を苛立たせる嫌らしい選手として活躍した昨シーズンとは違い、厳しいマークを掻い潜れないことに自らが苛立ってしまっているように見える。セスク・ファブレガスも攻撃を構築する役割で目立つことが出来ず、守備での弱さばかりが露呈。
チームを支えていた選手に「代えがきかない」という事実を思い知らされる結果になった。ここで、責任を問われるべきはジョゼ・モウリーニョだけではない。
選手の獲得を統括するフロントも、指揮官の作ったチームを信頼し過ぎてしまった。DFでは移籍期間中狙い続けたエヴァートンのジョン・ストーンズを取り逃がし、移籍最終日にPSGのマルキーニョスに接触するも失敗。急遽獲得したパピ・ジロボジも、今のところは出場機会を得られていない。
また、セスク・ファブレガスの代役を用意していなかったこと、守備的なボランチとして期待出来る選手を獲得出来なかったことなども問題だ。セスクの様にゲームを作れる選手がいないことはチームの攻撃における幅を容赦なく狭め、マティッチの不調によって守備的なMFのポジションも層が薄くなってしまった。
そして、フロントの最大の失敗はFWのタイプを考えていなかった事だ。
レンタルでファルカオを獲得したものの、彼はスペースで勝負するタイプ。ジエゴ・コスタの様なポストプレイヤーに依存するチームにも関わらず、控えFWは2人ともポストプレーが苦手、というアンバランスな状態になってしまっている。昨年はドログバが二番手としてベンチに入っていたことで、ここのバランスがある程度保てていた。レミーとファルカオでは、ジエゴ・コスタの仕事をこなすことが出来ない。
ジョゼ・モウリーニョも「ジエゴ・コスタを失うと、我々は多くの問題に遭遇することになる。チームは彼に依存しているからだ」と認めているように、前線で身体を張れるタイプの獲得は必要不可欠だった。それこそ以前チェルシーに所属していたデンバ・バの様な選手を獲得出来ていれば、と思わずにはいられない。