展望
今オフのJリーグにおけるアジア枠のトレンドはズバリ「東南アジアの若手有望選手」だ。昨年辺りからベトナムやシンガポールを中心とした東南アジア各国の代表チームで活躍する逸材がJリーグにやってくるのでは?との噂をあちこちで耳にする機会が多くなった。
Jリーグは2014シーズンからパートナーシップ協定を締結した国出身の選手を「提携国枠選手」として扱うことで外国人枠の規制を緩和しており、放映権ビジネスも絡めた多岐にわたる戦略を練っている。来シーズンはJのあらゆるカテゴリーで活躍する東南アジア出身のJリーガーが見られるかもしれない。
東南アジア以外の地域に目を移すと、今夏の移籍マーケットで神戸も興味を示していた韓国代表MFコ・ミョンジン(27)がカタールのアル・ラーヤン、Aリーグ屈指のMFとの評価を確立していた元千葉のオーストラリア代表MFマーク・ミリガン(30)がUAEのバニヤスSC、かつて浦和でプレーしたDFマシュー・スピラノビッチ(27)が中国の杭州緑城へ移籍。またウェスタンシドニーのACL制覇に大きく貢献したFWトミ・ユーリッチ(24)も欧州(ローダJC)へ新天地を求めた。
このように夏にかなりの“大物アジア人選手”が動いたため、今冬のアジアンビッグディールは減少しそうな印象を受ける。
≪9月20日のフェイエノールト戦でデビューしたユーリッチ。ここまで7試合に出場し3ゴールを決めている≫
最後に気になるのは中国勢の動きだ。毎年クラブレベルでは際立った成果を残しているものの、代表戦の成績はなかなか上昇する気配が見られずにいる(※ロシアW杯予選も香港戦の2引き分けにより敗退寸前の状況)。国内選手のレベルアップは急務で、今後クラブ、あるいは政府が何かしらの策を講じてくる可能性が高い。
その中で考えられるのは、“Jリーグのクラブに中国の有望若手選手をローン移籍させるプロジェクト”。Jのクラブとパートナーシップ協定を結び、有望な若手選手をそのクラブにローン移籍させて高いレベルでの経験を積ませる、といったやり方だ。
従来のローン移籍は移籍先のクラブが「ローン料」を獲得したい選手の所属先に支払う仕組みとなっているが、裕福な中国クラブはローン料を要求せず、むしろパートナーシップ協定を結ぶ契約料を移籍先のクラブに“支払ってくれる”可能性が高い。彼らにとっては自分のクラブの若手選手が日本でレベルの高いパスサッカーを会得して帰ってくればいい訳で、そのための支出は惜しまないのではないか。
資金不足に悩むJクラブと選手育成のため高いレベルでのプレーを望む中国クラブ。このようなお互いにwin-winの関係を持った移籍システムが今後誕生するかもしれない。
筆者名:yosuke
杜の都、仙台を中心に活動している20代。小学生の頃にアジアのエスニックなユニフォームデザインに魅力を感じ、独自に情報収集を開始。歳を重ねる毎にアジアサッカーの虜となる。FKでの得点が大好物だが、これまで10年以上のアマチュア選手キャリアの中で1度もFKを蹴ったことがない(なかなか蹴らせてもらえない)。またベガルタ仙台やソニー仙台、コバルトーレ女川といった地元クラブの応援にも熱を注いでいる。
Twitter: @maimaidenden