ミラン復活=セリエA復活?
前述で、筆者は「ミランの復活」をテーマにして述べた。
ここに着目すると、「ミランを愛して止まないミラニスタの独り言」のような印象が残るかもしれないだろう。
だが、今回彼らを取上げたことに、そのような意図は全くない。
何故なら、「ミランの復活がセリエAの復活に繋がるのではないか」という説が今回のメインテーマであるからだ。
セリエAは、言わずと知れた、欧州でもトップクラスのリーグだ。
だが、「欧州最高のリーグか?」と問われると、"カルチョ好き”でもその答えには躊躇することだろう。現在のUEFAランキングでは、スペイン(ラ・リーガ)、ドイツ(ブンデスリーガ)、イングランド(プレミアリーグ)に次ぐ四番手。昨季のランキングポイントに目を移すと、14.250で、これはフランス(リーグアン)の14.416を下回るスコア。1980年代中盤から2000年頃までUEFAランキングのトップを独走していた時代を思い返すと、その凋落ぶりは目も当てられない。
そして、その凋落ぶりは、日本におけるセリエA人気にも色濃く反映している。
国内での海外リーグ毎の人気を推し量る物差しとしては、映像配信事業者たちの取り組み具合がわかりやすいが、近年の「セリエA軽視」は非常にわかりやすい。
シーズン開幕直前に『DAZN』がセリエAを取り扱うことを決断したが、それまでは『スカパー!』の毎節5試合の放送のみ。一方、ラ・リーガは『DAZN』と『WOWOW』が毎節最大5試合を放送し、『スポナビライブ』に至っては、全試合ライブ配信という力の入れ具合。プレミアリーグについては、『WOWOW』のポジションが『J SPORTS』に代わるが、扱う規模に関しては同様のレベルである。また、ブンデスリーガは、扱う事業者数こそ『DAZN』の一社に限定されるが、2018-19シーズンから『スカパー!』が全試合放送することを発表しており、注目度はトップクラスと言える。
※各リーグ共に、録画放送、クラブ公式TVによる配信例は除く。
まさに、これは、海外リーグのパワーバランスの縮図である。
無論、この結果の全てが、セリエAの人気低迷を物語っていると判断するには、たしかに早計かもしれない。
だが、『WOWOW』がセリエAを積極的に推していた1990年代、『スカパー!』が看板番組の一つに据えていた2000年前後を振り返ってみると、彼ら事業者と海外サッカーの流行との関係性は否定できないだろう。
では、何故、このような事態が発生してしまったのだろうか。その回答には様々な意見があるだろうが、筆者は「ミランの栄枯盛衰」がリンクしていると考えている。
1990年代は、アリーゴ・サッキ、ファビオ・カペッロの両名将が「グランデミラン」を築き上げ、その終焉後においても、ジョージ・ウェア、ロベルト・バッジョ、オリヴァー・ビアホフ、アンドリー・シェフチェンコらを筆頭にワールドクラスが集結。2000年に入ってからも、マヌエル・ルイ・コスタ、フィリッポ・インザーギ、アンドレア・ピルロ、アレッサンドロ・ネスタ、クラレンス・セードルフ、カフー、カカ、ヤープ・スタムらタレントがロッソネーロの一員となった。
そして、この流れはチームレベルも確実に上げ、結果にもダイレクトに表れた。毎年のようにトロフィーを掲げていた前述の「グランデミラン時代」を除いても、1998-99と2003-04にはスクデット、2002-03と2006-07シーズンにはチャンピオンズリーグを制したことはまだ記憶にも新しいだろう。
しかし、その後は、インテルの全盛期を挟み、(一時ミランが再び輝きを放つが)ユヴェントスの一強時代へと変化。そして、この潮流が生まれると同時に、セリエAの人気低迷も始まった。
と評すると、インテリスタやユヴェンティーノは渋い顔をするかもしれない。
しかし、ミランという存在が、ヒーロー役にしろ、アンチヒーロー役にしろ、自分たちにとっても"大きな存在”であったことは認めるところではないだろうか。
表現が適切ではないかもしれないが、NBAで言うならば、マイケル・ジョーダンやスコッティ・ピッペンを擁し、世界から注目を集めた「シカゴ・ブルズ」、日本のプロ野球における「読売巨人軍」に似た存在だったとも言えるかもしれない。
だが、そんな彼らが表舞台から徐々にフェードアウトしてしまったことで、「セリエA自体にも甚大なるダメージを与えた」というのが筆者の見方である。
セリエAの人気が陰りを見せる一方で、インテルやユヴェントスが、欧州最高峰の舞台でも一定の結果を残してきたことは事実であり、ナポリ、ローマらセリエAのその他の上位陣が低レベル化したわけではない。となれば、彼らの活躍以外に"何か”が不足していたという印象は否めない。そういう意味でも、ミランが良くも悪くも、"絵になる集団”であり続ければ、ここまで低迷するようなことはなかったのではないだろうか…という考えは的外れだろうか?
残念ながら、この考えが暴論か否かは、ミランが今後数シーズンので証明してくれる以外には方法はないが、ミラニスタからの賛同だけでも頂けると幸いだ。
ミランの蘇りが、セリエAの人気復活を呼び込むか――数年後に改めて振り返ってみたい。
【厳選Qoly】日本代表の2024年が終了…複数回招集されながら「出場ゼロ」だった5名