名将サー・アレックス・ファーガソンに率いられたユナイテッドは、非常にシンプルかつ手堅い試合運びを常としていた。

システムやビルドアップの局面で、戦術的に特異なことをしている訳ではない。ハードワークが根幹にあり、たとえ多くのチャンスを作ることができなくても、セットプレーからの1発で勝ってしまうような、憎たらしいほどの勝負強さがあった。

チェルシーとのファイナルでも、タフな試合を焦れずに戦うユナイテッドらしさは全開。特に2トップのルーニーとテベスのプレッシングが生命線となっており、この試合ではベンチ外となっていたパク・チソンは持ち前の運動量を活かして戦術の体現者となっていた。

フォーマットは変わらず受け継がれている

ゲームキャプテンを務めたファーディナンドがビッグイヤーを掲げてから、まもなく12年が経つ。思えばこの10年余りで、様々な戦術のトレンドがあった。

ペップ・グアルディオラがバルセロナで構築し、フットボール界を席巻したポゼッションスタイル。そのスタイルにビセンテ・デル・ボスケがバランスを加えたスペイン代表は、2010年のワールドカップ、2012年のEUROを制した。

2012年EURO決勝のイタリア戦で先制ゴールを決めるダビド・シルバ。イニエスタのスルーパスが半端ない…。

同時期のドイツでは、ゲーゲンプレスの生みの親であるユルゲン・クロップがドルトムントを躍進させる。

2014年のワールドカップではオランダ、コスタリカといった3バック(5バック)が採用されたチームが勝ち進むと、4バックを基本とするクラブが多かったイングランド・プレミアリーグでも3バックが流行した。