◯ことわざや比喩表現

「石の上にも3年」ということわざをご存知の方も多いのではないでしょうか?

辞書によると「冷たい石の上でも3年も座りつづけていれば暖まってくる。がまん強く辛抱すれば必ず成功することのたとえ」です。

これを翻訳アプリにかけてみると「3 years on the stone」と訳しました。

直訳としては合っていますが、言いたい事は違いますよね?

「我慢強くいればいつか成功する」と言いたいのであって、別に「3年間石の上にいろ」とそのままの意味で伝わってしまうとかなりクレイジーです。笑

英語では「Perseverance pays dividends」ということわざがあるそうで、直訳すると「辛抱は配当を支払う」という事になるそうです。

辛抱とは概念なので本当にお金を払う事はありませんが、「我慢強くいればいつか成功する」という伝えたい意味は同じです。

この2つは直訳すれば全く違う意味の言葉ですが、本当に伝えたい意味は同じで、ことわざとしての深みもなるべく維持しています。

こういう、《直訳ではないけれど意味も深みもユーモアも消さない通訳》というのはもはや芸術です。

これが瞬間変換力になります。

直訳しているだけでは単に「外国語が話せる人」であって、「通訳」とはまた一つ違ってくるのです。

◯翻訳の芸術

DMM英会話より引用です。

“bear(熊)と bear(我慢する)”

ある映画でクマの絵が描かれたお菓子のパッケージに「unBEARably GOOD !!」という文句がありました。

これは “bear” に「熊」と「我慢する」の意味があることをかけたダジャレです。直訳すれば「我慢できないほど美味しい!」ですが、それではダジャレにならないので翻訳者はこう訳しました。

〈日本語訳〉

“美味しくてクマっちゃう!”

いかがでしょうか?

直訳ではなく、敢えて違う言葉に訳した事で、むしろ伝えたい本当の意味も、そのユーモアも伝わっていますよね?

「我慢できないほど美味しい!」ではダジャレのユーモアやインパクトは残せないはずです。

時に通訳は「ノリで訳すのは悪い通訳」と言われます。

それが本当にいい加減な通訳なら悪いことですが、実はプロの通訳のハイレベルな技なのかも知れません。

むしろ私はFC琉球時代、言葉が出来るだけの直訳しか出来ない初心者通訳を抜け出すのに、この“ノリで訳す”技術と経験を手に入れるための努力をしてきて、今も継続しています。

1秒で同時通訳しないといけない現場では、時に“ノリで訳す”事は高等テクニックなのです。