誤訳と思わせてからが通訳

よく聞く通訳の問題には「誤訳」が挙げられます。

もちろん我々も人間ですから、前項で挙げたように専門外の言葉が分からなかったり、単純に聞き間違いや勘違いをしたり、経験が足りない事もあるかも知れません。

ですが、通訳の上手さを理解出来るようになると、誤訳と思っていた言葉が芸術に見えてくる、そんな経験もします。

よく一般の方に思われている「正しい通訳」とは、「直訳である」場合が多いからです。

◯日本語が存在しない物

例えばブラジル人が「パワーの源はシュラスコ」と言った時に、シュラスコを知らない人にはどう伝えるべきでしょうか?

シュラスコとそのまま訳しても間違いではありませんが、知らない方にはイメージ出来ません。

なので、敢えて「パワーの源はシュラスコという、ブラジル式BBQです」と、補足を入れる通訳のほうが、多くの日本人にはイメージが伝わるのではないでしょうか。

ただ、この通訳法は「原文はそんなに長く話していないじゃないか」「ブラジルなんて単語は話してないのに勝手に付け足してるじゃないか」と誤解されやすいので、選手と事前に話して可能な限り心配を取り除いておく必要があります。

長く関わる選手には事前に説明出来るので良くても、画面の向こうにいらっしゃる視聴者様には事前説明は出来ないので、少し難しさを感じる所です。

写真:記者会見の通訳現場