女子が憧れるのは「男子サッカー」

――レベルアップという点で、日本が育成年代で伸ばすべきところというのは?

サッカーの醍醐味は、ゴールを奪うところと守るところ。その繰り返しがサッカーという競技なんですよね。特に海外ではそうです。

こうしていけばこうなる…という正解はなくて、ゴールを目指すための手段がいろいろな形であるというものです。

今私は育成年代を見ているんですけど、『サッカーを知っているかどうか』という点で言えば、男子のほうが普段からテレビでよく見ているんですよね。

女子は、サッカーを見る習慣がある子とない子で大きく分かれているんです。それが指導する上で難しいところですね。サッカーの根本、サッカーの本質というところからの入り口が違う。

チームとしてどのようにゴールを目指すのか、個人としてはどうゴールを奪う技術や守る技術を磨いていくのか。そのような本質のところをもっと緻密に磨いていくことができれば、なでしこジャパンもまだ世界一に返り咲くことができると思います。

今は海外の選手のほうがプレーエリアが広いですし、キックの威力やパススピードも違いますけど、徐々に日本の選手の体つきも変わってきていますよね。

私たちの年代とは違って、今はある程度フィジカル面でのサポートもありますし、育成年代からそれらを積み重ねていけばおそらく海外のチームと同じようなスタイルにも対応できる。対等にやれる日がやってくるんじゃないかと感じます。

――なでしこジャパンにまだプラスできる要素という点では、どのように感じてらっしゃいますか?

男子でもそうですが、三笘選手などスペシャルな選手が増えていますよね。一方で女子の場合はまだスペシャルな存在はまだいないですね。

海外の強いチームには最終的に苦しい場所を打開するストライカーや、絶対的なリーダーのセンターバックがいたりする。そういったスペシャルな存在はここ何年かはいませんよね。澤さん(澤穂希)や宮間(あや)のようなリーダーや、永里(優季)のようなストライカー。

みんないい個性はあるんですけど、本当にスペシャルな選手がいれば更に日本の良さが出しやすくなると思います。

――世界の勢力図という話もしようかと思っていたんですが、アメリカもミア・ハムやアビー・ワンバックのような「スペシャルな選手」がいなくなって以前より低迷していますよね。

アメリカで一時代を築いた伝説のストライカー、アビー・ワンバック

そう思います。逆にヨーロッパには多くなりましたし、本当に男子と同じような環境になってきていますよね。指導者も男女関係なく入ってきていて、戦術的にも、選手のプロ意識という点でも、すごく変わったんだと思いますね。

サッカーが好きな女の子が憧れるものって、そもそも男子のサッカーなんですよ。

最初から女子サッカーを見る子ってほとんどいない。ヨーロッパのサッカーやJリーグを見て、『いいな!』と思って憧れを持つんです。

でも、昔だったら『マンチェスター・ユナイテッドに入りたい』と思ったって不可能だったじゃないですか。

それが、今は叶うんです。男子しかないから無理!だったところが、今は女子でもマンチェスター・ユナイテッドのユニフォームを着ることを目指せるんです。それはモチベーションも上がりますよね。そのクラブのファンだった子が選手として活躍できる。

ワールドカップでの活躍によりマンチェスター・ユナイテッドに移籍した宮澤ひなた

そういった意味では、いまヨーロッパで起こっていることを日本でもいい例として参考にできたらいいですよね。

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…観客動員数については予想ほど伸びておらず、ときには「失敗している」とも評価されるWEリーグ。しかしながら、実際にプレーしている選手の環境としてはプロという階段が一つ加わったことにより目標が生まれ、モチベーションが高まるという効果を生み出しているという。

後日公開するインタビュー第2回では、大谷未央さんが経験したワールドカップとオリンピックの記憶について伺っているぞ。お楽しみに。

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