ロマンを感じさせる左利きの長身CBのルーツ

現代サッカーでは世界最高と称されるリヴァプールのオランダ代表CBフィルヒル・ファン・ダイク(195cm92kg)を筆頭に、高さや強さ、速さ、上手さを兼備し、他競技でも一流のアスリートになれそうな逸材がCBを選択する時代が到来している。

希少価値の高い左利き、188cm80kgという身体的なポテンシャルを秘めた田中もその系譜にある現代型CBだ。サッカーファンにロマンを抱かせてくれる20歳のルーツとは?

「5歳の頃からサッカーを始め、小学校時代は地元のミナトSCでプレーしていました。3年生まではポジションも関係なくサッカーを楽しんでいましたね。チームには4年生になると【選手コース】があり、しっかりとした11人制のサッカーをする中で、指導者の方から『CBで行くぞ』と言われたのがキッカケです。それ以降は6年生の時にボランチも少し経験しましたが、ずっとCBでプレーしていますね」

――そして、中学生になるタイミングで柏レイソルのU-15に加入されました。

「小学校6年生の時に千葉県トレセンに選ばれていたのですが、トレセンにレイソルとジェフ(ジェフユナイテッド千葉)の指導者の方がいらっしゃいました。その指導者の方々からお話をいただいて。

実は最初にジェフの練習に参加したこともあって、そのままジェフに入ろうと考えていました。ただ、その1カ月後にレイソルからもお話をいただき、実際にレイソルの練習に参加して施設や環境も見学していく中で、レイソルがJ1クラブであることの凄みを感じました。その時にレイソルのスタッフの方々から『ウチは左利きの選手を大事にしていて、左利きのCBもよく育っているんだよ』というお話を伺っていたので、レイソルに入ることに決めました。

そして、自分がレイソルのU-15に加入した当時、トップチームを率いていたのが下平監督でした。そのトップチームではアカデミー出身の中谷くん(中谷進之介、現ガンバ大阪)と中山雄太くん(現ハダースフィールド・タウンFC/イングランド2部)がCBコンビを組んでいたんです」

田中は憧れの存在に自身と同じレフティである日本代表DF中山雄太を挙げる。

当時の柏では経験が必要とされる守備陣において、GK中村航輔(ポルティモネンセ/ポルトガル)やDF中谷、MF秋野央樹(現長崎)など、20歳過ぎのアカデミー出身の若手選手が主力として活躍。中学生だった田中に強い憧れや夢を抱かせたことだろう。

「小学校の頃からずっとプロになる意識はしていたんですけど、中学1年でレイソルに入った頃から、隣のグラウンドでトップチームが練習しているのを見ていて次第に実感が湧いてきました。

高校2年の頃には3年生からでもプロになれるように身体作りもしていましたし、実際に3年生になった頃にルヴァンカップでデビュー(2種登録で3試合出場)した事もあり、その頃から現実的にプロとしてやっていく決意をしていました」