――今回のプロジェクトを進めていて、発表に至るまでさまざまなことがあったと思います。一番これは大変だったな、みたいことは何でした?
今回のようにY-3チームと一緒に取り組んでいくなかで、私たちだけでは決めることができない問題がやはりありました。
グラフィックの考え方やグラフィックそのものというのが一番のところですけど、Y-3として考える美学や美しさ。それは、ユニフォームの素材や生地においても同じです。
どうしたらY-3に求められるものを、フットボールとしても同じレベルに持っていけるか。ここのすり合わせやコミュニケーションというのは、とても、とても大変でしたね(苦笑)。そこが一番苦労したポイントかなと思います。
あとは、拠点が私たちは日本で、グローバルはドイツにあるので、物理的に離れている分タイムラグが発生したり、すれ違いがどうしても発生してしまって。デザインやサンプルをすぐに確認できないといったことも大変でした。
――今回、パリのファッションウィークにて、「Y-3」2025春夏コレクションのランウェイで新ユニフォームをサプライズ発表するというのもすごく特別な取り組みだったと思います。あれはどのようにして決まったのですか?
構想自体は早い段階から、ブレインストーミングをしている時に「こういうのはどうだろう」というラフな会話のなかから出てきたものです。じゃあ、どうやったら実現できるかと考えに至るまでもスピードは速かったなと思っています。
ただ、決まってから実際にショーが始まるまで長い時間があったので、その間どういうふうに進めていくんだろうなとか、本当にこれは進んでいるんだろうかという気持ちもありました。
具体的なプランが出てきた時には「あの時に話していたアイデアが本当に実現しているんだ」と、驚き半分というか。全員がやりたかったことなんだなぁと思って、前例のないやり方になってすごく良かったなと思いますね。
――フットサルなどで新しい日本代表ユニフォームを着ていると周りの人がすごく声をかけてくれて、実際にその人も買ったりしているのですが、「Y-3が入ってあの価格ってすごいよね」と言われたりします。ユニフォームの価格設定に関しては、やはり多くの人が手に取りやすいようにといった“こだわり”はあったのでしょうか?
ここもすごく意味があって、先ほども少しお話したのですが、今回のユニフォームはY-3のプロダクトでもありますし、adidasのプロダクトでもあります。ただ、なによりもまず日本代表のユニフォームであること、なんですね。
Y-3は、ラグジュアリーファッションとスポーツを融合したブランドですので、価格帯も通常のadidasのプロダクトとは異なります。
ただ、日本代表のユニフォームであることを考えた時に、手が届かない方が出てきてしまうことは避けたいという想いがありました。価格帯によっては「欲しいのに買えない」といったことも起こりかねません。
先ほどもお話ししたように、adidasでは、サッカーを文化として根付かせていきたいという思いを強く持っていますので、多くの方に手に取っていただける価格帯を目指すべきだと思っていました。そこはかなり意識して値段は設定させていただきました。
――adidasにとって、Y-3は特別な存在の一つなのかなと思います。今回のような取り組みができたというところで、グローバルなど海外を含む「外からの評価」という点ではどのような声がありますか?
日本代表のユニフォームは特にここ数年…2020年頃からかなり注目をされるようになってきていると思います。
2022年の『ORIGAMI』をコンセプトにしたユニフォーム。そして、なでしこジャパン専用のピンクと紫を使った『SUNRISE』というコンセプトのアウェイユニフォームが2023年に出ましたが、この2つのコンセプトは海外の方からも非常に注目されました。
もちろん、日本代表チームのカタールワールドカップでのパフォーマンスがすごく良かったということもあり、世界中から大きな注目を集めることになりました。そういった流れもあり、おそらく日本のユニフォームに対する意識が世界中で高まっていたのかなと思っています。
2022年にもNIGOさんとのコラボレーションを行いました。この時はユニフォームではなくプレマッチという形で試合前に着るスペシャルコレクションでしたが、そういった日本ならではのコラボレーションもあって、日本自体への興味・関心も年々高まっていると思います。
そういったなかで、今回のようなアプローチができたことにより、ユニフォームもそうですし、サッカー日本代表への興味というのが各国から出てきているのかなと思いますね。それはかなり感じます。
――それでは最後に、adidasとして、日本代表と今後どのような未来を描いていきたいかをうかがってもいいですか?
非常に大切なパートナーですし、最良のパートナーだと思っています。彼らと一緒に取り組むことで、私たちが今まで見られなかったものや、これから見ていけるものも、大きく異なってくると思っています。
だからこそ、今回のようにユニフォームを一緒に企画をして、選手に着てもらうことでサッカーファミリーの数をどんどん大きくしていきたいと思います。
やはりフットボールの担当者としては、競技者の人口であったり、サッカーが大好きでこのユニフォームが着たいと思ってもらえるような人であったり、もっともっとプレーしたいなと思ってくれる人、そして選手に憧れていく子どもたちがどんどん増えていってもらいたいと思います。
今後もJFAさんと一緒に、こういったユニフォームや日本代表選手を起用したキャンペーンを展開していくことで、日本中のサッカーが好きな人を増やしたり、サッカーが好きな人のより強い興味であったり、応援したいなという気持ちを強く作っていきたいと考えています。
――そうした思いが記事で少しでも多くの人に伝われば、と思います。本日はありがとうございました!
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