「我々には代表候補が(欧米に)154人もいる」

昨年2月にインドネシアサッカー協会長に就任した際にエリック・トヒル会長が報道陣に向けて不敵に言い放った言葉だ。世界的強豪セリエA・インテルの会長を務めたインドネシア人実業家はインドネシア代表が2026 FIFAワールドカップ北米大会の出場権を勝ち取るために心血を注いでいる。

積極的に欧州出身選手を代表に招集するトヒル会長

上記した154人とは、インドネシア代表でプレーできる権利を有するインドネシアにルーツを持つ欧米育ちの選手を指している。現に欧州育ちの選手たちを積極招集して、同国代表はFIFAワールドカップアジア最終予選でサウジアラビア代表に1-1、オーストラリア代表に0-0と結果を出してアジアに衝撃を与えた。

果たしてインドネシアはアジア最強と称される日本にとって脅威となり得るのだろうか。際限なく強化が進む東南アジアの雄の実力に迫る。

(構成・文 高橋アオ)

守備力は最終予選屈指のクオリティ

先日行われたアジア最終予選でW杯にも出場歴があるアジアの強豪オーストラリア、サウジアラビアと対戦して立て続けに引き分けた実力の高さは、アジア中でニュースとして取り上げられた。

強豪国と渡り合うほどの堅守を支えた選手たちの大半が上記したインドネシアにルーツを持つ欧州出身の選手たちだった。今季のMLSオールスターに選出されたオランダ出身のGKマールテン・パエス(FCダラス)の招集に成功し、課題であったGKの質の向上につながった。

インドネシアの新守護神パエス

そしてDFラインにはセリエAヴェネツィアでレギュラーセンターバック(CB)を務めるDFジェイ・イツェス、左足のキック精度に優れ、サイドバック(SB)とCBを兼務できるDFカルフィン・フェルドンク(オランダ1部NEC)、推進力のあるドリブルが光るMFネイサン・ジョー・アオン(イングランド2部スウォンジー)、堅実な守備と上背を使った空中戦が得意なDFサンディ・ウォルシュ(ベルギー1部メヘレン)、J1セレッソ大阪でもプレーした長身CBのDFジャスティン・ハブナー(イングランド1部ウォルヴァーハンプトン)と強力なスカッドで強固なブロックをしいた。

個人能力に優れた欧州出身選手が形成するディフェンスラインは非常に堅く、実力者がそろうオーストラリアやサウジアラビアであっても攻略し切れなかった。守備の力だけでいえば最終予選出場チームで屈指の堅さを誇るだろう。

前線はオランダ出身のFWラファエル・ストライク(Aリーグメン・ブリスベンロアー)やサイドからの突破力に長けているFWラグナル・オラトマンゴン(ベルギー1部デンデル)がいるものの、後方と比較すると前線はややタレント不足が否めない状況だ。

それでも代表戦が開催される毎に新たな欧州出身選手が加わっており、ハイペースで強化が進んでいる。

前線の強化はもちろん、現在の戦力から原形を留めないほどのスカッドを形成する可能性があるため、各代表チームの関係者は戦々恐々としているという。