9連勝中の強敵に物おじしない

この日対戦した山形は最終節までにクラブ記録のリーグ戦9連勝を挙げて4位に入った強敵だった。だが岩渕は物おじしない姿勢で相手を窮地(きゅうち)へと追い込んでいった。攻めれば相手ゴール前へ飛び出して鋭いシュートを放ち、守れば激しいプレッシャーで相手のチャンスの芽を摘み取った。

鋭すぎる動き出しでゴールを挙げる背番号19の存在はチームの躍進に大きく貢献した。今季リーグ戦13得点を挙げた岩渕を筆頭に連動した攻守で山形を圧倒。J1昇格POまで約3週間のインターバルが功を奏した。

「(試合開催が)3週間空くことに対してはすごくネガティブな気持ちがありましたけど、その分山形はすぐに(試合を)やりたかったと思う。岡山的には良かったのかなと思います。(相手は)連勝してはいましたけど、『勝てる』としか思っていなかったので、自信はずっとありました」

自分たちが積み上げてきた堅守速攻がこの決戦で『正しかった』と証明するようにイレブンは躍動した。入念な準備に取り組み、チーム一丸となって手にした白星に駆けつけた約1000人の岡山サポーターは歓喜に包まれていた。

駆けつけたサポーターの歓声に拳を突き上げて応える岩渕

この日は仙台大時代の親友であり、今季でチーム活動終了により現役を引退した吉野蓮さん(JFLソニー仙台FC)も山形に駆けつけて岩渕を応援していた。

今季で現役を引退した吉野さん

現役を引退した仲間に向けて「すごく考えて、考えた決断だと思うので尊重しながら『お疲れ様』ということと、きょう観に来てくれていたので良かったです」と感謝していた。

決勝は6位ベガルタ仙台とホーム・シティライトスタジアムで激突する。岩渕は5月に開催されたアウェイ仙台戦で決勝弾を決めており、J1をかけた決戦もその再現を果たしたい。

「(仙台は)全員が勢いよく前から来るチーム。僕たちとフォーメーションは違いますけど、ちょっと似ている部分があると思います。個人的にはいいイメージがありますけど、まだ何も成し遂げていないし、何があるか分からないのがプレーオフだと思います。きょうみたいな気持ちで、また準備していきたいです」

【インタビュー】今季活動終了のJFLソニー仙台FC、最後の主将吉野蓮の決意と現役引退

リーグ9連勝の強豪を打ち破った岡山は、7日午後1時5分にホームで仙台とJ1昇格をかけた今季最後の戦いに臨む。東北で生まれ育った点取り屋が東北の名門を連破してチームの悲願であるJ1初昇格へと導いてみせる。

(取材・文 高橋アオ)

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