[J2第5節、愛媛FC 1-5 ジェフユナイテッド千葉、3月16日、千葉・フクダ電子アリーナ]

愛媛は1-5で千葉に大敗し、J2開幕5戦未勝利となった。

前半の立ちがり8分に先制したが、追加点を奪えず失速。その後千葉の猛攻を止められずに、大量5失点を喫した。この日、ボランチで先発出場した現役大学生MF武藤寛(ひろし、中京大3年)にとってほろ苦いプロデビュー戦となった。それでも期待の21歳は、自身が憧れ続けたフクアリでの試合から得た多くの学びを今後の糧にしていくと誓った。

現役大学生、憧れの地でJデビュー!プロ初アシスト!!

現役大学生の武藤は市立船橋高時代に憧れ続けたフクアリでプロデビューを果たした。

「ここは憧れの舞台だったので、すごく感慨深いものがありました。プロの世界が夢でしたし、ピッチに立ったときにはプロとしての実感が湧いてきました」

フクアリは全国高校サッカー選手権大会の千葉県予選決勝を行う舞台であり、同県でサッカーに励む部活動生ならば一度は足を踏み入れたいと思うスタジアムだ。

武藤が市立船橋高在学時にチームは選手権の千葉県王者に2度なっているが、いずれの決勝戦でもケガなどの影響により出場がかなわなかった。

高校卒業後は、プロになる目標を掲げて愛知県の中京大へ進学。武器である運動量と推進力に磨きをかけると、昨年8月2日に2026年度の愛媛加入が内定し、今年の2月11日には「2025年JFA・Jリーグ特別指定選手」として認定された。

昨夏の総理大臣杯で背番号10背負ってキレのあるドリブルを披露した中京大MF武藤(高橋アオ撮影)

ボランチで先発出場した武藤は、開幕4戦未勝利中のチームの中で勝利を呼び寄せるプレーを心掛けたが、なかなか自分の持ち味を出せなかった。

愛媛の石丸清隆監督は「試合に出る前は相当緊張していた」と21歳の様子を回想。武藤自身も「大学のサッカーと雰囲気がまったく違った」と、上手く試合に入れなかったと認めた。

デビュー戦でプロの壁にぶち当たった背番号39だったが、自身のプレーで緊張を吹き飛ばしてみせた。

前半8分にカウンターのチャンスを得た愛媛は、ピッチ中央でボールを受けた武藤が左サイドにいたMF窪田(くぼた)稜へパスを供給。フリーでボールを受けた背番号13は小刻みにステップを切って相手を交わし、ボックス外から右足を振り抜いた。これが勢いよく相手ゴール左側へ突き刺さり、愛媛が先制に成功した。

「先制点を取ってくれたので、緊張がすごくほぐれました。プレーするごとに緊張もなくなっていき、途中からは自分の持ち味を少しずつ出せたと思います」

Jリーグデビュー戦でプロ初アシストが武藤の目を覚まさせた。相手フォワードの傍から積極的に顔を出してビルドアップに関与し続けたほか、身体を張ったディフェンスで守備にも貢献。プレーが切れれば、手を叩いて味方を鼓舞するなど、勝ちたい気持ちを全面に出した。

「どんどん前に、前に行けているときが、自分の中でいいプレーができているときだと思う。監督からは『どんどん前を向いてくれ、前を見てくれ』と言われていたので、ボールを受けたらまずは前を見ることを意識していました」と指揮官からの助言が好プレーにつながった。

その後、千葉に1得点を返されるも同点で前半を終えた。憧れ続けたフクアリで堂々のプレーを披露した武藤だったが、後半はプロの世界の厳しさを味わった。